日程がかなり厳しい政府の支援事業です。
というのも、農水省が実施要領等を公表したのが4月30日。申請のためには都道府県に実施計画書などを提出する必要があり、その締切は、
宮城県の場合は、5月27日(水曜)の午後5時
ちなみに熊本県は5月29日。函館市は募集終了。
うかつにも、私がこの事業を知ったのは今日でした。残念!
急いで申請要領等を調べると、この短期間に申請書を都道府県に提出するのは、かなり難しいのではないかと思います。
以下に、簡単に要領をまとめます。
対象となる事業者
① 直近3カ月間の売上が前年同期に比べて10%以上減少しており、かつ、その主たる原因がインバウンドの減少によるものであること。
この事業の結果が定量的(数値データ)に示せるようになっていることが大切です。
② 新型コロナウイルス感染症が従業員に発生した場合も想定した事業継続計画(BCP)を策定していること。
- 農水省がBCPの記載例を紹介しています。
- 新型コロナウイルス対策は、一般社団法人日本フードサービス協会が策定した「外食業の事業継続のためのガイドライン」を参考にするように、農水省が勧めています。
- HACCPに沿った衛生管理をしている必要があると思われます。できれば、その認証(自治体の認証、ISO22000等)をとっていると計画が認められやすくなると思います。
対象となる取組
A 衛生管理の改善を図るための設備導入
【例】 空気換気設備 、 手洗い設備
B 業態転換を図るための改装
【例】 パーティションの設置 、 ビュッフェスタイルからの転換
交付額
上限が1000万円。下限が25万円。
なお、申請額は千円単位で計上します。
私が「厳しい」と感じる点
最も厳しいなと思うのは、2点あります。
1点目は、BCPの策定が要件になっている所です。
2019年の帝国データバンクの調査によれば、東北六県の企業のBCPに関する意識は次の通りです。
- BCP策定済み:約11%
- BCP査定中あるいは検討中を合わせても4割
- 策定済みのサービス業は3.4%
昨年の台風後にBCPへの意識は高まったと思いますが、それでもどのくらいの企業がBCPを策定したでしょうか?
この申請に合わせて策定するにしても、少々厳しいかなと思います。
また、HACCPにしても、2020年6月から施行ですが完全実施は1年後ということもあり、まだ対応していない店舗もあることでしょう。
しかも、BCPもHACCPも、自社だけで策定できない場合は、指導できる専門家に支援を要請せざるを得ませんが、対応できるコンサルタントが手配できるかどうかが問題になります。
2点目は、インバウンドの減少による売上減をどのように示すのか?ということです。
お店独自で伝票等を工夫して、データを取っていればいいのですが。
実施要領には「自社データで定量的に示せない場合、他の指標を用いることができる」とあります。
具体的なことは、自治体の窓口と相談して進める方がよろしいでしょう。
ただ、今回の申請期限に間に合わない企業にも少し明るい情報を。
まず、自民党の政務調査会が第2次補正予算の編成に向けてまとめた「提言」に、飲食店への空調導入、店舗改装等支援の増額を求める文言が記載されております。(ちなみに自民党の提言では「インバウンド」の文字が消えています)
また、農水省の「外食産業におけるインバウンド需要回復緊急支援事業の概要(令和2年4月30日)」の「10 今後のスケジュール」に、「予算配分残が生じた場合は、追加要望調査実施予定」とあります。
つまり、今回の申請期限に間に合わなくても、またチャンスが訪れる可能性はあります。
そのことに期待して、準備をしてもよいのでは?と私は思います。
何しろHACCPに沿った衛生管理は、いずれ必ずやらなければならないものです。またBCPにしても、長く事業を展開しようとするならば、策定した方が良いでしょう。
なお、HACCPの考えを取り入れた衛生管理の手引書は厚労省のHPからダウンロードできます。
BCPについては、農水省のHPからはこの申請に対応した記載例がダウンロードできますし、一般的なものについては中小企業庁のHPが参考になります。
なお、当事務所では、これらの手引書や参考例に基づいた、各事業者様の実態に応じたHACCPやBCPの書類作成のお手伝いをいたします。
まずは、メールで御相談ください。