Twitterで、ちきりんさんが「消費税が逆進的ってほんまかいな」という御自身の11年前のブログを引いて、「今でも意見は変わっていない」と書かれておられました。実際にちきりんさんのブログを読んで、考えたことを以下に書きます。
参照 「Chikirinの日記」2008-05-21 https://chikirin.hatenablog.com/entry/20080521
結論から書けば、私は概ねちきりんさんの考えに賛同しております。
私も消費税の増税はやむを得ないと考えています。また、所得の低い人も安心して生活できるように、もっと税を使うという点も同じ考えです。
ただ、「『消費税の逆進性が高い』というのが嘘に見え」たり、「『消費税は貧乏人に不利で金持ちに有利だ』というのは、教科書的な理論にすぎないのでは?」という点には同意できません。
試算してみます。
この表は、2人以上の世帯のうち勤労者世帯の1か月間の収入と支出です。
階級 | 1 | 5 | 8 | 10 |
可処分所得 | 240,000 | 410,000 | 540,000 | 790,000 |
消費支出 | 190,000 | 250,000 | 310,000 | 410,000 |
消費税負担額 | 14,000 | 19,000 | 23,000 | 30,000 |
負担割合 | 6% | 5% | 4% | 4% |
可処分-1支出 | 50,000 | 160,000 | 230,000 | 380,000 |
(注1)(注2)
上の試算によれば、確かに所得が高くなるほど消費税負担額も増加する傾向があるので、この意味では「逆進性がある」という表現には疑問が出そうです。
一方で、負担割合はどうでしょうか。
最も所得の低い層が6%、高い層が4%ですので「たかが2%の差ではないか」という見方もあるかもしれませんが、それでも所得の低い方が負担割合は相対的に高い。
ただ、私が注意したいのは、可処分所得から消費支出を引いた残額です。つまり、当然と言えば当然ですが高所得者は消費税を支払っても、家計にはゆとりがあるのです。
負担割合の差はたかだか2%かもしれませんが、家計のゆとりからみたら、やはり低所得世帯の方が消費税の負担は重く感じるのではないでしょうか?
しかも、低所得世帯は支出も可能な限り切り詰めるだろうし、逆に所得が高くなれば消費する食材にしても衣服にしてもゆとりをもって買っていると思います。1つ1つの支出に対する気持ちのゆとりにも差があるのです。
ちなみに、最も低い階級の消費支出で、全階級の世帯が暮らしたらどうなるかを計算したのが次の表です。
階級 | 1 | 5 | 8 | 10 |
可処分所得 | 240,000 | 410,000 | 540,000 | 790,000 |
消費支出 | 190,000 | 190,000 | 190,000 | 190,000 |
消費税負担額 | 14,000 | 14,000 | 14,000 | 140,000 |
負担割合 | 6% | 3% | 3% | 2% |
可処分-支出 | 50,000 | 220,000 | 350,000 | 600,000 |
消費税の逆進性や、低所得者に不利だという指摘は、可処分所得に対する税の負担感の重さや、家計や消費へのゆとり感を表しているのであり、実際に支出している税額を言っているのではない。私はそう思うのです。
そういう意味で、消費税は低所得者にとって重い課税であるという、消費税に反対する人々の主張に、私は頷けます。
にもかかわらず、私はやはり消費税の増税はやむを得ないと思うのです。
現在の社会保障制度を今後を維持していくだけでも、財源は厳しい。まして、教育・子育て・障碍者への支援・介護・医療等で、「今の制度では不十分でさらに充実したものを目指すべきだ」というならなおさらです。
また、税負担だけではなく、支出の在り方にも目を光らせるべきではありませんか?
会計検査院は度々支出の無駄を指摘していますが、なぜ国会の決算委員会でそうしたチェックができていなかったのか、不思議です。
大統領と会談するたびに、高額の買い物をしているように思うのは、私だけでしょうか?それは本当に必要で、妥当な額なのでしょうか?
選挙の時に、これまでの実績を、もっとわかりやすく、忌憚なく、具体的に報道してもらえたなら、1票はさらに価値があるものになると私は思うのですが。
(注1)試算に使用したデータは、総務省統計局ホームページに載っている「家計調査年報(家計収支編)2018年(平成30年)」の「第3表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」を参考にし、収入と支出は千円の位を四捨五入し、消費税負担額は百円の位を四捨五入しております。
(注2)表の「階級」欄の数字は、上記の十分位階級の数を表しています。簡単に言えば、二人以上の勤労者世帯を10段階に分けた内の、どの段階に属するかという数字です。可処分所得は実収入から税・社会保険料等を引いた、いわゆる「手取り」額相当です。消費支出は、1か月の支出額ですが、住居費のほか,自動車等購入等を除いた額です。消費税負担額は、消費支出額が内税だったとして計算しました(外税で計算しても、負担割合に大きな差は見られませんでした)。負担割合は、消費税負担額の可処分所得に対する割合です。