町内会・自治会・集落など(以下、「町内会等」と記します)が認可地縁団体※になるメリットの1つは、町内会等の名義で不動産を登記できることです。
なかでも、地域の人々の共有として登記していた不動産を町内会等の名義にする際に、共有者の中に所在不明の人が含まれている場合には、「認可地縁団体の不動案登記の特例」が利用できることは、認可地縁団体の強みだと思います。
※認可地縁団体とは、町内会等の一定の地域内に住所がある人々で作る団体が、市区町村長の認可を受けて法人化したものです。
Table of Contents
1.法人になっていない町内会等が不動産を取得する場合
法人になっていない町内会等が不動産を取得する場合、その登記は次の2つのうちどちらかの方法しかありません。これは町内会等だけでなく、他の団体(例えば野球チームが練習場所として土地を確保したい場合など)にも当てはまります。
- 代表者の氏名で登記する。
- 地域住民の共有として登記する。
この2つの方法について、私はデメリットなら幾つか簡単に挙げることができますが、メリットについては思いつかないのです。
デメリット1 町内会等の財産と個人の財産の区別がつかない。
実質は町内会等が所有する不動産なのに、登記簿上は個人(単独または共有者全員)の名義になっているので、当事者以外の人が登記簿を見た時には個人又は共有者の財産のように見えてしまいます。
これは、登記簿が実態を表していないので大変危険だと私は思います。
例えば、町内会等の代表者Aさんが会社を経営しており、その会社が債務超過になってしまった場合に、債権者がAさん名義の不動産を差し押さえる可能性があります。
デメリット2 町内会等の財産なのに、相続手続が発生する。
登記簿に記載されている所有者が亡くなった時、名義を変更するために相続手続が発生します。
所有者が遺言に自分名義の町内会等の財産をどうするか書いておくとか、遺言が無いとしても相続人が町内会等の不動産が故人の名義になっていることを知っていれば良いのですが、そうでない場合には名義変更を失念する可能性があります。
特にその不動産の固定資産財評価額が低く、自治体から名義人に毎年送られる固定資産税納税通知書に、町内会等所有不動産が記載されていない場合には、相続人がその不動産の存在を知らないこともあり得ます。
2.認可地縁団体が不動産を取得するとき
認可地縁団体は法人ですので、法人名義で不動産を取得し登記することが可能ですし、法人として利用が可能になります。またそれに伴う費用負担も法人として負担することになります。
認可地縁団体が不動産を取得するケースは、次の2つが考えられます。
- 法人化した後に、新たに不動産を取得する。
- 法人化前の町内会等が所有していた不動産を、法人化後に認可地縁団体の名義にする。
どちらのケースにおいても、町内会等名義の不動産を取得し登記することについて、総会で議決を取ることが必要です。
その上で、1については一般的な手順で不動産を取得し、登記することができると思われます。
法人化する前から町内会等が所有している不動産を、法人化後に認可地縁団体の名義にする場合
2の場合については、総会決議を受けて、不動産名義にする以前の登記簿上の名義人全員から、買い受け又は譲り受けるための契約書に署名・押印を得て、登記手続きをする段取りになるでしょう。
登記の方法や必要書類については司法書士にお尋ねください。
ただ問題は、かつての名義人の中に所在不明の方がいる場合です。
従来から町内会等が所有していた土地の登記簿上の名義人は多数にわたることがあり、名義人に相続が発生していると、所在不明の方がいる可能性は高くなります。
地縁団体が法人化していれば、こうしたケースで不動産登記の特例を受けることができます。
3.認可地縁団体が不動産登記の特例を利用できる条件
次の4つの条件を全て満たしている場合に、認可地縁団体は不動産の特例を利用することができます。
(1) 認可地縁団体名義にする不動産を、認可を受ける前から地縁団体が所有している。
※10年以上、「所有の意思」をもって、平穏かつ公然と占有していることが必要です。
(2) 登記簿の名義人の全てが、認可地縁団体の構成員か以前は構成員だった。
(3) (2)の名義人のうち、所在が不明な者がいる。
(4)不動産を認可地縁団体の名義で登記をする意思があること。
4.認可地縁団体の不動産登記の特例を受ける手順
① 市町村担当窓口との事前相談
② 総会決議
総会で、「10年以上町内会等で所有していたけれど町内会等の名義になっていない不動産を、認可地縁団体の名義にする決議」をします。
③ 市町村長に公告を求める申請
④ 市町村長による公告
申請を審査した後、「不動産を認可地縁団体名義にすることに異議のある登記名義人は市町村長に3カ月以内に異議を述べること」という旨の公告をする。
公告の期間は最低3カ月であって、3カ月以上になることもあるかもしれません。
⑤ 証明書の受領
公告で定められた期限内に異議を述べる者がいなかった場合には、市町村長は「公告をしたこと」と「異議を述べる者がいなかったこと」の証明書を認可地縁団体に提供します。
⑥ 登記申請
証明書以外に登記に必要な書類については司法書士にお尋ねください。
市町村長に提出する書類
市町村長に公告を求める申請をする時は、次の書類を提出します。
- 申請書
- 不動産の登記事項証明書
- 総会の議案書と議事録
- 申請者が代表者であることを証する書面 (地縁団体証明書など)
- 上記「3.認可地縁団体が不動産登記の特例を利用できる条件」を満たしていることを証明する書類
3.認可地縁団体が不動産登記の特例を利用できる条件 を満たしている事を証明する書類の例
市町村の担当窓口との事前相談で、どのような書類を提出すれば良いか確認しましょう。
たとえば、次のような書類が考えられます。
条件 | 書類の例 |
---|---|
地縁団体が不動産を所有している。 | 公共料金等の領収証 まど |
10年以上所有の意思をもって平穏かつ公然と占有 | 10年以上前からの固定資産課税台帳の記載事項証明書など |
登記簿謄本に記載されている所有者の全てが、 認可地縁団体の構成員又はかつて構成員だった | 地縁団体の名簿、会報、議事録等 |
登記簿謄本に記載されている所有者の全部または一部の所在が不明 | ・住所地に出した郵便物が「宛先に宛名人がいない」ために返送されたことがわかるもの ・少なくとも1人については、手を尽くしても所在がわからないこと。 (相続が発生している場合には、相続人であることを証する書類も必要になるかもしれません) |
上記の他に、登記簿謄本に記載されている所有者から、「公告を申請すること」への同意書を取り付ける必要があるかもしれません。
ただ、登記の時には地縁団体への売買又は譲渡契約書が必要になると思われるので、あらかじめ契約をし、その写しを提出する方法も考えられます。
関連記事
この記事に関連して、以下のものも御覧ください。
町内会、自治会や集落を法人にする方法 | 澤田行政書士事務所 (022-796-5845)
上の記事に、当事務所の認可地縁団体関連の業務及び料金を記しています。
次の記事では、不動産取得以外に町内会等を法人化するメリットを考えています。