60歳からの終活~連絡帳第5章(6)お葬式とお墓

自分のお葬式やお墓をどうするか?

考えたことはありますか?

私は、「お葬式は簡素に、親族のみ」ということと「遺骨は海洋散骨」と希望しています。

では、そうした希望はどのように、伝えれば良いのでしょうか?

遺言書に書くという手段があります。

でも、遺言書に書いて効果があるのは、お墓やお仏壇は誰が受け継ぐかということだけです。

しかも、一般的に遺言書を遺族が目にする時にはお葬式は終わった時期ですし、もうしかすると納骨後ということもあるでしょう。

ですから、お葬式や埋葬についての希望は、遺言書ではなく別のものに記し、家族などに生前に伝えておいた方が良いのです。

その1つの方法が、連絡帳(あるいはエンディングノート)に書く方法です。

また、家族以外の人に葬儀等を依頼するのであれば、死後事務委任契約を結ぶことも選択肢の1つです。

お葬式や埋葬と死後事務委任契約

お一人で生活されておられる方や、高齢者だけの世帯の方などは、お葬式や埋葬については

行政書士等の専門職と死後事務委任契約

を結ぶことを強くお勧めします。

ただ、心に留めておいていただきたいのは、

依頼する死後事務の内容が多いと、報酬額は高額になる

ということです。

では、どうすれば良いか?

御自身が生前にできることは、可能な限りやってしまう

というシンプルな手段に限ります。

例えば、葬儀や埋葬については事業者と生前契約を済ませてしまうということ。

そうすると、死後事務の内容としては葬儀埋葬が契約通りに行われたことを確認し、費用を支払うだけになるので、報酬額は押さえられるはずです。

生前契約を済ませていることなども連絡帳(あるいはエンディングノート)に記しておけば、家族や支援者も安心することでしょう。

成年後見人はお葬式をして、遺骨を埋葬してくれる?

成年後見人は民法の規定により、火葬や埋葬に関わる契約を家庭裁判所の許可を得て行うことはできます。

しかし、お葬式については権限がありません。

お葬式は宗教などの「個人の思想・心情」に深い関わりがあるため、家庭裁判所も立ち入ることのできない部分だからです。

ただ実務上は、直葬やそれに近い葬儀であれば家庭裁判所も認めているようです。

でも、もう少し参列者の多くなるような葬儀や、宗教的な儀式を伴うような葬儀を希望される場合には、成年後見人の権限では難しいのではないかと私は思います。

また、保佐人や補助人については火葬や埋葬に携わる権限自体が民法に定められていません。

ですから

お葬式や遺骨の埋葬をお願いできる親族がいらっしゃらない方は、

認知症にならないうちに、あるいは病状が深刻になる前に

お葬式や埋葬を引き受けてくれる人(あるいは事業者)と、契約を結んでおいた方が良いのです。

遺言書に「配偶者居住権」を書く前に

先日、「遺言書に配偶者居住権について書きたいのですが?」と相談にお見えになられた御夫婦がいらっしゃいました。

 私の場合、遺言書作成の御相談ときは、相談内容にお答えする前に必ずお聞きすることがあります。そのお答えを聞きながら、相談者がお持ちの制度への理解度とともに、「心配されていることは何か?」などの本音部分を確認していきます。

 この相談者の方の場合、配偶者居住権の仕組みは大変よくお調べになられたようでした。

 御夫婦が配偶者居住権の設定をお考えになったのは、相続税の節税を目的とするためだそうです。

 たしかに、税理士さんのWebサイトには、配偶者居住権は節税の効果があると紹介されているものがほとんどです。特に、2次相続*では効果が発揮できそうです。

 でも、中には「節税効果が期待できないケースもある」という税理士さんもおられます。

 ですから、節税目的で配偶者居住権の設定をお考えの場合には、まず、相続税に強い税理士さんに相談した方が良いでしょう。

 節税が目的でないならば、配偶者居住権はデメリットもありますし、そもそも配偶者居住権を設定しなくても良いこともあります。

 いずれにしても、配偶者居住権については、設定する・しないを決定する前に、専門職に相談することを強くお勧めいたします。

 先の相談者御夫婦の場合、私から配偶者居住権のデメリットや自筆証書遺言の書き方などの情報を提供し、節税効果については税理士に相談した上で遺言書を作ることと、書いた遺言書は専門家に診てもらうことなどをアドバイスいたしました。。

なお、配偶者居住権について、詳しくはこちらを御覧ください。

2次相続とは・・・

例えば、夫婦と子供という家族構成を考えます。

夫が先に亡くなった場合の相続を「1次相続」と言います。

1次相続の結果、夫の遺産を妻と子供が相続しますが、遺産のうち不動産を妻の名義にしたとしましょう。

時がたち、妻が亡くなった場合、妻の名義になった不動産を子供が相続する場合を、2次相続といいます。

60歳からの終活 ~連絡帳第5章(5)入院の時などの必要情報

 体調不良になった時などは、

  • いつから、どんな症状が出たのか
  • 最近の生活の様子

の他に、

過去の病気やケガの情報

が病名の確定などに必要になることがあります。

そういうわけで、当事務所の連絡帳には過去の病歴を書くようにしています。

ただ、風邪のような軽い症状まで書くようにすると大変なので、次のことに絞っています。

  • 入院することになった病気やケガ
  • 手術
  • 入院も手術もしていないけれど、長期に渡って通院をした

その時の医療機関も記載すると良いと思います。

また、入院だけでなく、施設への入所も想定して、飲食物についての情報も書いておくと良いかもしれません。

私・澤田の場合

何年も前に教員をしていたときは、微熱や咳が続いて体調がすぐれないことが多かったです。

でも今はたまに風邪をひいたり、ギックリ腰になるくらいなので、連絡帳に記載することはほとんどありません。

妻の料理もおいしく頂けて、ありがたいことです。

とはいえ、将来はどうなるのかわかりませんから、私の連絡帳のこのページについては空欄のままにしておきます。

60歳からの終活 ~ 連絡帳第5章(4)緊急連絡先

 あなたに何かあった時の緊急連絡先。

 離れて暮らす御家族などを思い浮かべる方がほとんどかもしれません。

 もし、成年後見人なども緊急連絡先としてリストに入れておきましょう。同じように任意後見契約を結んでいるならば、任意後見人になる方も記載しておくべきです。

 その他に、所属している会社や団体、サークルがあれば、それも記入しましょう。

 当事務所の連絡帳には、かかりつけの病院や医師、連絡先、受診した科目も、このページに記載することにしています。

 たとえば、救急搬送された病院で、あなたの病歴や服薬について知る必要がある場合、かかりつけの医師が分かれば情報の伝達が早く出来ると考えたからです。

 その他にも介護や、延命治療についてのあなたの意思についても、あなたと医師とのつながり方や信頼度によっては、かかりつけ医は重要な役割を担うようになると思われます。

 場合によっては、離れて暮らす家族にとっても、かかりつけ医は心強い存在になることでしょう。

私・澤田の終活

 あなたは、かかりつけ医をもっていますか?

 私は転居が多かったので、正直言って「かかりつけの医師をもつ」という意識は希薄でした。

 歯医者の場合は、治療のために一回通うと何回か連続して通院することになるから、なんとなく「かかりつけ」みたいな感覚はありましたが...。

 でも、60歳を目前に控えた昨年、少し考えを改めました。

 年一回の健康診断も、自宅からも事務所からも通いやすい近所のクリニックに改めました。昨年はそこで胃カメラによる検査もしています。

 ここ数年は風邪も引かなくなっていますが、その時もこのクリニックを受診するつもりです。

 そうすることで、私の体に関する情報は、概ねこのクリニックに蓄積されていくことでしょう。

 歯医者も職場から徒歩3分のところにして、3~4か月に一回の割合でクリーニングも兼ねて通っています。ですから、歯や口に関する私の情報は、この歯科医師に聞けば済むと思っています。

 何年か後、私が認知症になったとしても、安心して体を預けられるような医師・歯科医師をもつことは、重要な終活の1つだと私は考えています。

かかりつけ医について

今後の医療や介護の仕組みを考える上で、かかりつけの医師の存在は重要だろうと思います。

このかかりつけ医の役割などを知りたい方は、次のWebサイトを御覧ください。

厚生労働省|「かかりつけ医」ってなに? (mhlw.go.jp)

国民の信頼に応えるかかりつけ医として|国民のみなさまへ|日本医師会 (med.or.jp)

60歳からの終活~連絡帳第5章(3)入院や避難する時の持ち物

 災害に備えて避難する時の持出用カバン。

 それを用意している方は多いと思いますが、緊急入院の時に必要な物を考えたことはありますか?

 年齢を重ねれば、突然のケガや病気で入院をする可能性は高まります。

 実際、私のお客様で、家の中で転んだことで大腿骨を骨折し、入院した経験をお持ちの方いらっしゃいます。その方は1人暮らしだったので、緊急入院に備えて持出カバンを準備いたために、電話でお子さんに連絡するだけで必要な物がそろったようです。

緊急入院用の持出カバン | 澤田行政書士事務所

災害と入院。この二つの場面で共通して必要な物がある一方で、異なる物があります。

例えば、入院の時にはパジャマが必要ですが、避難の場所によってはパジャマより運動着のような物の方が良いかもしれません。

この機会に一度、両方のリストを作ってみて整理してみると良いのではないでしょうか?

災害時の持ち物や備蓄品などの参考情報

 首相官邸のホームページでは、避難する際の持ち物や、備蓄品の他に、災害に備えて日頃準備しておくと良い情報が見られます。

災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~ | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

入院の時の持ち物の参考情報

国立がん研究センターが運営する がん情報サービス というサイトから、次の2つの冊子をPDFでダウンロードできます。

・がんになったら手にとるガイド

・わたしの療養手帳

どちらの冊子にも入院時の持ち物リストが掲載されています。

がん以外の病気やケガで入院する場合にも参考になる情報です。

がんになったら手にとるガイド:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

大雨や台風の時の事前避難

当事務所が作った手帳には、持ち物リストの他に、大雨や台風の時の事前避難場所と連絡先を記す項目もあります。

これについては、ここに書くだけでなく、離れて住む家族や友人、場合によっては地域の方にも伝えておくと良いでしょう。

60歳からの終活 ~ 連絡帳第5章(2)介護について

 当事務所作成のエンディングノート言わないノート「『 』からの連絡帳」。

 今回は、ご自身に介護が必要になった場合の希望などについて書くコーナーです。

 認知症が進んだとき、患者さん御本人がお考えや気持ちを表現しづらくなることがあります。

仮にそうなったとしても、可能な限り元気なころにおっしゃっていたことや記録を頼りに、

 「〇〇さんなら、『~してほしい』と言うだろう」

と想像して介護の方法などを考えるのが、現在取り組まれている方法です。

 だから、

介護が必要になった時の自分の希望を、

元気なうちに書いておくことが、

大変重要なのです。

 そこで連絡帳では、主として次のことについての希望を書いていただくコーナーを設けました。

  • お住いをどうするか?
  • 介護をする方に伝えておくべき持病などは?
  • 後見人など、介護の契約や財産管理などの支援をお願いしたい人は?
  • ペットはどうする?

 もちろん、これらのこと以外でも、「介護が必要になったら、〇〇してほしい!」ということはドンドン書いてください!

成年後見制度について

 「後見人がついたら、お金を自由に使えなくなった!」

 「ろくに会いにも来ないのに、報酬はガッッポリ持っていかれた!」

上のような成年後見制度についての苦情を聞くことがあります。

  中にはこうした後見人もいるのかもしれませんが、中にはちょっとした行き違いから後見人への不平不満が積み重なって、上のような発言につながっている思われるものもあります。

 私自身は、後見制度と言うのは現在の日本では必要不可欠な制度だと思っています。

 ただ、法定後見制度は家庭裁判所が関係することもあり、多少は窮屈な思いをするかもしれません。ですから、ぜひ

元気なうちに任意後見契約 又は 家族信託 について検討をしてください!

なお、任意後見契約 や 家族信託については、次のページや動画を御覧ください。

親なき後と任意後見契約

後見人が貢献します! (Youtube動画)

私の後見人は私が選ぶ (Youtube動画)

家族信託って何?

60歳からの終活 ~ 連絡帳第5章(1)延命治療について

 今回からタイトルにもエンディングノートとは記さないことにいたします。簡単に連絡帳と書きますね。

 連絡帳の第5章は

 私のために

というタイトルです。

 入院したり介護が必要になった時、あるいは最後の時を迎えた時のために、ご自身の希望を書くことが主な内容です。

 その第5章の最初の項目は、

延命治療(あるいは延命措置)についての御自身の意思

を書くところです。

 延命治療とは

病気が治る見込みがなく、死期が近くなった場合、延命のための医療

と言われています。

※内閣府の「平成24年度高齢者の健康に関する意識調査」の質問をもとに定義しました。

 延命治療を行うかどうかは、まず本人の意思が重要です。

 でも「本人の意思が重要」とは言っても、実際に延命治療を行うかどうかの判断が必要な時には、本人が意思を表すことができない状態になっています。

 だからこそ、事前に延命治療についての意思を明確に表明しておくことが大切なのです。

 また、家族の考えも重要です。

 延命治療を行うかどうかを判断する時点では、医師等は家族から医療への同意を得る必要があるからです。この時、家族は重い責任を負います。

 家族が延命治療を要請しても、あるいは「本人の希望」を尊重し延命治療を断ったとしても、後でこの時の判断について苦しみます。

 この家族の苦しみを和らげる方法の1つが、本人による事前の意思の表明です。

 連絡帳には延命治療についての選択肢をいくつか用意しています。そこから自分の気持ちに合うものに✔を付けた上で(場合によっては矛盾しない2つの選択肢に✔することもありえます)、その理由を手書きで書き、最後に日付と署名をするようにしてあります。

 でも、本当は次の3つの内の、いずれかが良いと私は思います。

  • 前文手書き
  • 公正証書
  • 公益財団法人日本尊厳死協会のリビングウイル

 ちなみに私は、連絡帳の記載をもとに、自筆書面を作っています。

 その上で、家族に自分の気持ちを自分の口から伝えておくことが最も大切です。

できれば同居の家族だけでなく、遠方に住む家族にも伝えておくことが望ましいです。「そんな話、聞いたことがない!」という家族がいると、家族間の意見の対立が生じやすいからです。

尊厳死と安楽死

公益財団法人日本尊厳死協会のWebサイトによれば、

「尊厳死とは、不治で末期に至った患者が、本人の意思に基づいて、死期を単に引き延ばすためだけの延命措置を断わり、自然の経過のまま受け入れる死のこと」

と説明されています。

公益財団法人日本尊厳死協会 「よくあるご質問」 から

一方で、安楽死とは、不治で末期であるという点は尊厳死と同じですが、

「医師など第三者が薬物などを使って患者の死期を積極的に早めること」

という点が尊厳死とは異なります。

※同じく公益財団法人日本尊厳死協会 「よくあるご質問」 から

以前、NHKが日本の患者さんがスイスで安楽死を行ったことを取り上げた番組が話題になったことがあります。

NHKスペシャル 彼女は安楽死を選んだ|番組|NHKアーカイブス

海外には安楽死を合法として認めている国があります。そうした国制度では、安楽死が選択できる条件や方法を詳細に設定して、複数の医師や法律専門職等が条件に合っているかどうかを時間をかけて判定した上で行えるようです。

韓国ドラマの「医師ヨハン」は、安楽死と尊厳死についても触れており、かなり考えさせられました。

将来の遺族の心の負担を軽くするために

延命治療を行ったかどうかに関わらず、その決断を医師に伝えた家族は、ご本人がお亡くなりになった後に苦しむことが多いと上に書きました。

 その家族の心の負担を軽くする方法として、事前に自分の意思を書面に記し、口頭でも伝えることの大切さもお示ししています。

 その他に、私が「有効かもしれない」と思っていることが、大きく言って2つあります。

① 遺書 又は ビデオメッセージ

遺産の処分の仕方については、法的に有効な遺言書にすべきです。

ここで示した遺書又はビデオメッセージは、遺言書とは別です。

あくまでも将来の遺族に、あなたの気持ちを伝える目的のものです。

これまで御遺族の中には、遺品整理の時に見つけた日記やメモを読んだことが救いになったと言う方もいらっしゃいます。

② 人のつながり

あなたと将来の遺族の共通の知人は、死後の悲しみを分かち合える心強い存在になると思います。

もしその知人が近隣にお住いなら、もっと良いと思います。

今現在、そうした知人がいないならば、これからつながりを作っていく事も終活の1つに加えてみてください。

「 」からの連絡帳 ~ 御希望の方に提供いたします。

当事務所の

世の中で「エンディングノート」と言われるものかもしれないけれど

あえて「エンディングノート」と言わないノート

の名称を改めた

「 」からの連絡帳

を、御希望の方に有料で提供いたします。

詳しくは、次のページを御覧ください。

⇒ 「~からの連絡帳」を提供いたします【有料】

60歳からのエンディングノート ~ 第4章私の歩み

  子供の頃のアルバムを見返しながら、つい時間を忘れてその頃の思い出を語り合ってしまう。

 そうしているうちに、子供の頃に抱いていた夢も思い出すことも...。

 私だけかもしれませんが、案外、子供は親のことを知らないですよね。

 私の亡父はもちろん、母にしても、私よりも私の妻に昔のことを話している気がします。

 市販のエンディングノートなどに、自分の歴史に関わることを書くページがあります。

 その主な目的は2つ。

 1つは、介護が必要になった時に、御本人を理解するための重要な情報だから。

 2つ目に、その人らしい葬儀を行うため。

 これらの目的に、私はもう1つ加えたい。

 それは、自分のやりたいことを、言い換えればこれからの生活をより充実させるため。

 私が作成したノートの第3章に「やりたいこと」を設けていることは、前に御紹介しております。

※「60歳からのエンディングノート~第3章やってみたいこと」を御覧ください。

でも、自分のやってみたいことを書くのって、難しいですよね。

と、妻も申しておりました。

 未来を考える時、歴史からヒントをもらえることがあります。それは人の生活にも言えることじゃないでしょうか?

 自分のこれまでの歩みを、近しい人と語り合う。それだけでも十分意味のある時間です。その豊かな時間を過ごす中で、もしかすると見えてくる「〇〇をやりたい」という気持ち。

 そうしたことがノートと向き合う中で生まれたら...。そうした願いを込めて。