家族信託で使う言葉

家族信託には特有の言葉があります。

このページでは、言葉の意味を大雑把に説明します。

<御注意ください>

①意味については「ニュアンスが伝われば良い」と思って書いているので、多少、正確さにはかけるかもしれません。家族信託の相談をする時に、その専門職に補足説明してもらってください。

②家族信託の多くは、信託契約で作られていると思います。そのため、意味を説明している文は信託契約を想定して書いているとお考え下さい。

1 家族信託の作り方に関わる言葉

言葉 意味
 信託契約

 財産を預ける人(委託者)と、預かった財産を管理・利用する人(受託者)が、預ける財産や管理・利用の目的や方法などを契約すること。

★おそらく、ほとんどの家族信託がこの方法で始まっていると思います。

 遺言信託

 委託者が、信託に必要な事柄を遺言書に記載して始める信託です。

 したがって、信託がスタートするのは委託者が亡くなった後になります。

 信託宣言

 委託者自身が受託者となって、自分の財産を信託する方法です。

 公正証書で「自分の財産を自分で信託します」的な宣言を作ったり、受益者に通知(確定日付のある証書でします)したりします。

 この方法でする信託を「自己信託」と言います。

2 信託契約に関わる言葉

言葉 意味
 信託行為

信託契約を結んだり、遺言信託を書いたり、信託宣言をすること。

 信託契約書

委託者、受託者、受益者は誰?

信託の目的は何か? 信託財産は何?

信託契約が終了するのはどんな場合? 信託契約が終了した後、残った財産を受取る人は誰?

というような信託の取り決めが書かれている重要書類です。

 信託の目的

何のために財産を信託するのか?」という、当初の委託者の狙いのことです。

あるいは、信託された財産の利用目的と言い換えても良いかと思います。

信託契約書に書かれている事は、全て、信託の目的に沿って解釈されます。

 信託財産

委託者から受託者に預けられた財産です。

現金(預金も含みます)、不動産の他に、株などの有価証券も含めることができます。

ですが、農地のように他の法律で規制されて信託できないものもあります。

信託財産は、委託者の物でも受託者の物でもなく、独立した財産です。それは、受益者のために利用されるものです。

 遺言代用信託

信託契約書の中に、

「 委託者兼最初の受益者 が亡くなった後は、配偶者(又は子)を受益者とする 」

というような定めがある信託のことを遺言代用信託と言います。

「遺言の代わりに利用できる信託」という意味です。

★「遺言信託」や「金融機関の遺言信託」など、似たような言葉が色々あって混乱してしまいますよね・・・。困ったことです。

 受益権

受益者が持っている権利のことです。

もともと信託は受益者の利益のために、受託者に財産を預けています。

受益者は、信託の目的などの範囲内で信託財産を利用した利益を受取ることができます。また、受託者が適切な管理や利用をしていることを監督する権利も受益者にはあります。

これらのことをまとめて、受益権と言います。

3 家族信託の人に関わる言葉

ここでは、簡単に人の意味(役割)について記します。

※もう少し詳しいことは、「家族信託の人の役割(近日公開予定)」を御覧ください。

言葉 意味(役割)
 委託者

信託財産を提供し、信託の目的を決定する人です。

信託契約では、受託者と契約書を作ります。

遺言信託では、遺言書を作成します。

自己信託では、信託宣言を行います。

 受託者

信託財産を、信託の目的の達成のために管理・利用します。その利益を受益者に渡すのも受託者の役目です。

家族信託の中で、とても重要な役割を担います。

万が一、受託者が辞めたり亡くなったりして、受託者が不在の状態が1年続くと、信託が終了してしまいます。

 受益者

信託の利益を受ける人です。

信託は、受益者のための財産管理・利用の仕組みと言えます。

 受益者代理人

受益者に代わって、受益者のために受益者の権限を行使する人です。

家族信託に必須の役割ではありません。

しかし、受益者が幼児だったり、認知症だったり、重い知的障害があるなどの理由で、十分に権利を行使できない場合に受益者代理人は重要になります。

また、受益者が何人もいる場合にも、受益者代理人を定めておくと、受益者の意思決定がスムーズになります。

 信託監督人

受託者が適切に役割を果たしていることを監督します。

家族信託に必須の役割ではありません。

しかし、受益者代理人と同様に、受益者が認知症などの理由で十分に権利を行使できない場合に、信託監督人が受託者を監督し、必要な指示を出すことができます。

信託監督人は、信託契約等で指定する他に、裁判所に申立てて選任してもらうこともできます。

残余財産受益者

信託が終了した後に残った財産(残余財産と言います)から給付を受けることができる受益者のことです。

信託終了の前から受益者である点で、次の帰属権利者とは異なります。

 帰属権利者

信託が終了した後に残った財産を受取る権利のある人です。

信託終了時に、はじめて登場します。

残余財産受益者や帰属権利者の指定がない場合には、委託者や相続人等に財産が引き継がれます。

4 その他の言葉

言葉 意味
信託口口座

銀行などの金融機関に作られる、信託財産専用の口座です。

仮に受託者が亡くなったとしても、受託者の相続財産にならなくなります。

単に信託用に新しい口座を受託者名で作った場合には、受託者死亡時には、遺産分割協議が整うまで、その口座が金融機関によって凍結される可能性があります。

信託口口座は、受託者の財産ではないことから、その恐れはありません。

公正証書

公証人という、法律のプロである公務員が作成する文書です。

公正証書で作成した契約書は信用度が高いので、金融機関で信託口口座を開設する場合の最低条件となります。

また、信託契約を締結する時に、委託者や受託者が、その内容を十分に了解した上で契約したことが推定されます。

確定日付のある証書

私文書(当事者だけで作った契約書等)が、「その日付の時に存在していました」という証明のある文書です。

内容証明郵便はその1つになります。また、公証人に日付を押印してもらうことでも確定日付のある証書になります。

信託では、時に確定日付のある証書が必要になることもあります。

信託目録

信託財産の中に不動産を含める時には、その不動産を登記しなければなりません。

この信託不動産の登記簿についているのが、信託目録です。

信託目録には、委託者、受託者や受益者の他に、信託の目的や管理委方法などが記載されています。つまり、一般の不動産の登記簿のように、誰でもその不動産の信託の状況が分かるようになっています。

この登記があるおかげで、仮に受託者が亡くなっても、この不動産は受託者の相続財産から除かれます。