最低賃金の地域格差

昨日(2019年7月29日)の朝日新聞に、「最低賃金 埋まらぬ地域格差」という記事が載っておりました。

地域別最低賃金は、毎年、各都道府県ごとに決まります。

先の記事によれば、最も高い東京都と最も低い県(おそらく年毎に違うのかもしれません)の差が、2002年度は時給で104円の差だったものが、2018年度には224円にまで広がっているというのです。

気になる記事だったので、少し調べてみました。

調べてみたのは、東京都八王子市と鹿児島県鹿児島市の比較です。ちなみに地域別最低賃金は都道府県ごとに決まるので、港区に住んでいようが、八王子に住んでいようが同じ最低賃金が適用されるということだと考えます。

鹿児島市の比較対象に八王子市を選んだのは、23区で比較したのでは環境差が大きすぎるのではないか、と思ったからです(東京の離島を選ばなかったのも同じです)。あとは私が東京にさほど詳しくないので、馴染みのある地名から選んだ以外の理由はありません。

鹿児島市を選んだのは、2018年10月決定の最低賃金が全国で最低だったことによります。(800円に届かなかった都道府県は、東北・四国・山陰・九州などに19ありました。)

上の表は、平成30年10月に決定した最低賃金をもとに私が試算したものです。そうすると、1か月の収入で44,800円、年間で537,600円の収入の差が生まれます。果たしてこの差を「妥当なもの」と認めてよいのか?ということです。

感覚的には、都市部の方が物価が高いから当然の差として認めてもよいような気もします。そこで、2019年6月の小売物価統計調査(動向編)を見てみます。ちなみに小売物価統計調査は総務省が取りまとめて発表する統計調査の1つです。

差は八王子の物価から鹿児島市のものを引いたものです。私は「案外差がない」と感じました。つまり、生活にかかる費用に、月4万もの差を生じさせるほどの大きな差はないと感じたのですが、いかがでしょうか。

でも、民間の家賃はさすがに東京は高いのでは?と思いますが・・・。

ちなみに、不動産サイトのアットホームで「2DK,築20年以内、駅徒歩20分以内」で検索してみました。

例えば、八王子市のめじろ台駅から徒歩10~15分で築15年ほどだと月6.2万円で管理費3000円。鹿児島市の谷山駅から徒歩5~10分くらいで築15年くらいだと月5.8万円で管理費1000円。

家賃には確かに差はありますが、それは1万円にも満たないものなのです。

さて、以上のように調べてみて、私は朝日新聞の記事に出ていた60歳の女性のように釈然としない思いになりました。

こうしたことは、先の参議院選挙でも問題になっていたようで、与党の中でも見直しを求める声は出てきていると記事は指摘しています。

ただ一方で、いきなり「全国一律、最低賃金1500円」とするわけにもいかないだろうとも思います。

そんなことをすれば、特に地方の中小企業の中には人件費が賄えず倒産するか、安い労働力を求め批判の強い外国人実習制度に頼らざるを得なくなるかのどちらかになることでしょう。いずれにしても、労働者にとっても良い結果になるとは思いません。

賃金の高低だけが幸・不幸を決定するわけではありません。

でも仕事の有無と、賃金の高低は「住む場所」を決める際の、大切な選択肢の1つではあります。

仕事の場としての企業を守りつつ、生活の在り方を左右する最低賃金を見直していく。このバランスを、どうするのが望ましいのか。

私にはわかりません。

わからないけれども、今後の制度改正や、人々の意識の動向等に注意をはらっていきたいとは思います。その結果を次の選挙時の投票に生かします。

多面的機能の発揮の促進に関する法律

土日、「季刊地域」という雑誌に思わずはまってしまいました。その中で「多面」という言葉がいくつかの記事に出ていたので、気になって調べたのです。

農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律

世の中には、私が目にも耳にもしたことのない法律は山ほどありますが、これもその1つでした。

以前からあった農山村の地域や営農を支援する制度のいくつかをとりまとめ、平成27年4月から施行されているものらしいのです。

この法律に基づいて実施されている制度は3つ。

多面的機能支払交付金。農家等で組織を作り共同して、活動地域の農地を維持するための施設を整備したり補修したり長寿命化を図ったりする活動に、国・都道府県・市町村から交付金が支給される制度。

中山間地域等直接支払交付金。山村等の農業生産条件が不利な地域の農業生産活動を支援する制度。

この二つは、高齢化等で、1つの農家の努力だけでは用水路の整備や、畦の補修やらが難しくなったり、耕作放棄地が増えて様々な問題に発展するのを防ぐことも目的みたいです。

もう一つの制度が環境保全型農業直接支払交付金。地球温暖化防止や生物多様性の保全のために、化学肥料・農薬を減らす取り組みや、カバークロップという作物を作らない期間に土壌侵食の防止を目的にイネ科やマメ科などの植物を作付けする取組を支援する制度。

食料の生産・供給だけではない農地の機能。それは作付面積の広大な農地だけではなく、古くからある棚田のような小さな田畑を守ることは、環境や生物の保護、防災の観点からも、あるいは文化の伝承や、もしかしたら働き方・生き方の観点からも大切なのかもしれません。

私もせっかく行政書士という仕事に関わっているのだから、もう少しこれらの制度を勉強し、関わっていけたらいいなと思った本日でした。

健康寿命と平均寿命から

 昨日は行政書士会の研修で「相続・民事信託」をテーマにした講義を聴講しながら、改めて「長寿命になったことのリスク」について考えてしまいました。

 報道等で「健康寿命」という言葉を聞いた記憶のある方は大勢いらっしゃると思いますが、大雑把にまとめたいと思います。

 今年3月に、厚生労働省の「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」が報告書をまとめ、発表しております。それによると、健康寿命というのは次の2つの指標と介護保険のデータを利用した指標の3つを用いているらしいです。

  • 国民生活基礎調査で「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に「ない」と答えた人の割合を用いた指標
  • 国民生活基礎調査で「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問に「よい」「まあよい」「ふつう」と答えた人の割合も用いた指標
  • 介護保険で「要介護2以上になるまでの期間」の平均

※要介護1

  歩行や立ち上がりに何らかの支えが必要。認知機能としては、混乱や理解低下が見られる。排せつや食事はほとんど自分ひとりでできる。

※要介護2

 排せつや食事に何らかの介助を必要とする以外は、要介護1と同様。

次に、2010年からの平均寿命と健康寿命の推移を見てみます。資料は同じく「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の報告書からです。

この表からすると、ここ数年は平均寿命と健康寿命の差は、男女とも縮まってはいるものの、男性で約9年、女性で約12年の開きがあるということです。先ほどの健康寿命の指標から考えると、晩年の9~12年位は医療または介護サービスを受けながら生活する方が多数になると思われます。

ちなみに私が誕生した頃。今から約55年ほど前の平均寿命は男性67.74歳、女性は72.94歳であり、現在の健康寿命にも至っていなかったのですね。(厚生労働省HP「平成29年簡易生命表の概況」から)

現在、私の周囲の70歳台の方々は、まだまだ元気いっぱいです。一方で相続の心配をされておられる方も多い。

ただ、上記の表からすると、相続の前に、御自身や配偶者が、介護が必要になった時のことも考えた方がよいでしょう。

ちなみに、その時に、どなたが、その御高齢の方々の生活を支えるのでしょう?

そのことも含めて、70歳くらいまでには、晩年の10年近くの生活を考え準備を始めた方がよい、と言えるかもしれません。

植物観察と防災

数年前は、年に数回、泉ヶ岳や七ツ森に出かけて山歩きを楽しんでおりました。最近はタイミングがあわなくて少し遠のいているのが残念ですけど。

山歩きで私が楽しいと思ったのは、行くたびに植物が変化していることでした。芽吹いていたり、花が咲いたり紅葉していたり。

御存知の通り、植物はその種類ごとに好む環境が異なります。

日光を好む植物もあれば、日影がいいものもある。池や川の近くのように水際に育つものもあれば、乾燥に強いものもある。

先日、ブラタモリで阿蘇を取り上げていました。阿蘇の外輪山では、毎年、野焼きをして、樹木が育たないようにしているそうです。そうして育った植物を伐採し、田畑に撒いているのだとか。

秋吉台のススキも有名ですが、ススキ野原を放置すれば、やがてアカマツやシラカンバなどの樹木が育ってくるそうです。

アカマツやシラカンバ、ヤナギなどは樹木の中でパイオニア(先駆)的な存在だそうです。先ほど触れたように、周りに木が生えていない環境に、真っ先に育つ種類。ですから、これらの樹木が植樹したわけでもないのに「アカマツ林」のように、ちょっとした群生状態になっていたら、そこは次のような理由で、何年か前に樹木がなくなった可能性を示しています。

  • 人がその土地一帯を利用するために(家を建てる、耕作する等)、樹木を伐採した。
  • 噴火や山火事で焼き払われた。
  • 土石流、土砂崩れ、雪崩、その他の自然災害に見舞われた。

もし、住まいや事業用の「いい土地がある」という情報を得て見に行ったら、アカマツが生えていた。なんてことがあったなら、その土地の歴史を調べた方が良さそうです。

あるいは、地区防災計画を策定するとか、地区独自のハザードマップを作る時に、あらかじめアカマツのようなパイオニアプランツのリストを作った上でフィールドワークに出かけると、新たな視点で地域を見直すことができるかもしれません。ちょっとしたハイキングのような気分で、フィールドワークもできますし。

オリンピック

東京オリンピックまで、あと1年だそうです。

過去の開催地では、オリンピック開催に反対するデモなどもあったように記憶しています。特に、リオは激しいものだったような気がします。

日本は、どちらかと言えば歓迎・盛り上げムードが広がっているようですが、反対派はいないのでしょうか?

もう周知のことではありますが、オリンピック招致の時に示した予算は8000億円。それが2018年12月では1兆3500億円(他に予備費として1000億~3000億円)。大会組織委員会の負担が6000億円、東京都が6000億円、国が1500億円。

言うまでもなく、東京都と国の財源は税金ですよね。

大会組織委員会がどのようにして6000億円をまかなうかといえば、ライセンス料やチケット販売、スポンサーからの収入。私にはよくわからない「増収見込み」で100億円、「その他」で330億円の収入見込み。(組織委員会のホームページより)

もし、組織委員会が負担分の6000億円をまかなえないときには、まず東京都が、それでも不十分なら最終的には国が負担すると、招致の時のパンフレットにあったと記憶しています。

また、2018年10月の会計検査院の発表では、国が負担するのは8000億円となっています。組織委員会の予算より6500億円の増。

社会保障費は毎年増加傾向。今年10月には消費税は10%に増税され、その影響を緩和するために様々な対策費用を国は支払うはず。

オリンピックによる経済効果を見込んで、これまで2回も消費税増税を延期したのだという噂も聞いておりますが、果たして目論見通りにいくのでしょうか?

「開催することが決まっているのだから、盛り上げていくしかない」というのは理解できますが、なんだかこの雰囲気に違和感を感じる私なのでした。

※ちなみに、こんな私でも日本人選手の活躍や、他国の選手であってもフェアプレーやファインプレーを見るのは楽しいし、たぶんオリンピック・パラリンピックの競技の放送も喜んで観ると思います。

「聞く」ということ

行政書士に限らず、人と関わる仕事をする者にとって、「聞く」という行為はとても重要で、かつ難しいものです。

難しい理由は

  1. 聞く側が、あらかじめストーリーを持ってしまっている。
  2. 聞く側が、話し手の表面的な言葉しか聞いていない。
  3. そもそも話し手が、自分自身の真意をつかんでいない。

といったことが挙げられるでしょうか。

1番目は、いわゆる予断。例えば、テストの成績が思わしくないという生徒の悩み。「この子はいつもヘラヘラしているから、勉強していないに違いない」というのが予断。実は深刻な悩みを抱えていて、それを悟られないようにヘラヘラしているのかもしれません。

2番目は、早合点。例えば、遺言を残したいと相談に来たお客様に、即座に「では公正証書遺言にしましょう」といった対応。本当は、家族と行き違いがあり、修復したいけれど意固地になっているのかもしれません。

3番目は意外と多いです。私は子供から相談されることが多かったのですが、例えば「やりたいことが見つからない」という進路に関わること。いろいろ話を聞くと、案外、興味のあることはあるけれど、チャレンジするきっかけがつかめないとか、親に言いにくいとか、「見つからない」のではなく他に壁があるのに気づいていないとか、薄々知っているけれど無意識に目をそらしているとか。大人も同じです。私もそう。

それで、自分の真意を理解すると、それだけで前に進めたりする。解決策が明確になったりする。

だから聞く側は、話している人の真意を聞き取るように心がけることが大切なんですね。

と、頭ではわかっていても十分にできない。知らず知らずのうちに自分の予断に当てはめてしまう。聞き流してしまう。真意を引き出せずに後悔する・・・。

「聞く」という行為は、奥が深いです。

山形の投票率はなぜ高いのか?

昨日行われた参議院選挙。

朝日新聞の調査によると、戦後2番目に低い投票率で48.80%だったそうです。つまり、投票したのは、有権者の半数に満たないというのです。

50%を超えたのは18選挙区で、その中で55%以上が岩手、秋田、山形、新潟の4選挙区。

中でも山形だけが60%を超えています。

山形は2016年の参議院選挙でも60%を超えていました。

なぜ、山形県の投票率は高いのでしょうか?

高齢者が多いから?

総務省の統計(H29年の推計)でみると、山形と同様に65歳以上の人口割合が30%以上のところは26県に上ります。真面目に投票に行くといわれている高齢者だけの理由ではなさそうです。(もし、私が年をとったら、投票に行くのが億劫に感じそうですけど)

同じく総務省の統計では、山形は1世帯あたりの人数が2.78人と日本1です。けれど福井、富山、佐賀は山形に近く2.65人を超えていますが、投票率は50%を切っています。

天気の影響?

tenki.jpの昨日の記録によれば、山形はほぼ曇り、最高気温は27。5℃。山形と人口の規模や65歳以上の割合が似ている大分の天気は9時から15時までにわか雨で、最高気温は29℃。先週木曜から雨模様だった影響もあってか、投票率は50.54%。

これを見れば多少は天気の影響も考えなければならないのかもしれませんが、私には「山形だけが60%を超えた」理由として決定的なものには思えません。

山形には、人口割合や天気といった条件以外に、投票率を60%超えに保つ何かがある。私には、そう思えます。それが産業構造なのか、地理的条件なのか、歴史的なものなのかわかりません。

けれども、投票率が50%を切る選挙で選ばれた議員が、日本全体の将来を左右する(実際には、参議院の非改選議員や衆議院もありますが)この事態を考えれば、山形がなぜ投票率を維持できているのか調べてみることは、有意義なことだと思います。

私には難問すぎるので、どなたか調べて教えていただけないかなあ。

生活のリスク

 生活をするうえで、どのようなリスクについて、どのような備えの仕方があるのか。

 地震や気象の変化はもちろん、それに伴う食糧や水、住まいの安定確保。世界情勢による石油等の価格変動。少子高齢化の結果として、おそらく経済成長率は大きく上向くことは難しく、年金だけで生活できる世の中でもなし。老後の生活を支えてくれる人材の確保も悩ましい。・・・。

 どうやら今後は、これまで以上に自分で考え備えていかなければならない。そんな世の中になったようですね。

 備える方法として、今思いつくことを挙げてみましょう。

 生活資金の供給源として、仕事、預金、投資、年金、保険。

 でも、いざという時には、やはり人間関係。質と、ある程度の量というか広がりも大切。

 けれど、個人で備えていくのは、やはり限界がありますよ。

 だからこそ、政治は大切なんですね。

 私たち1人1人が描く未来像の実現や、現在の課題の解決方法について、他の人々と率直に語り合い、集団としての意思決定をすることが、政治だとするならば、政治は私達自身の営みではあります。

 けれど、より大きな課題に対しては、信頼できる政治家に託す必要がある。

 だから、真剣に、誠実に課題に向き合う政治家が、党派を超えて、何人も何人も必要なんですよ。

 不満や不安や苦しみの声から逃げない政治家が。持論を展開するだけでなく、異論にも真摯に耳を傾ける。その上で、決断すべき時に決断し、決断した内容と理由を、わかる言葉で丹念に説明してくれる政治家が。

 一見、丁寧な言葉遣いかもしれないけれど、「その指摘は当たらない」と根拠を明示せずに、一方的に議論を終わらせてしまう流儀ではなく、一般人が理解できるような言語を持っている政治家が必要なんですよ。

 未来に、わずかでも希望を持てるような政治が。

 私たちに勇気を与えてほしいのは、スポーツ選手だけではありません。政治家からも勇気をもらいたい。

 もし、1つの政党だけでなく、どの党派にも、そうした人物がいるのなら、政治はもっと信頼できる。そう思います。

 逆に、そうした状況にないとしたら、生活のリスクは増加する。私はそんな危機感をおぼえます。

相続等のミニ・セミナー①

当事務所で、主に次の内容についてのミニ・セミナーを開催します。

  • 死亡後の主な手続きについて
  • エンディングノートに利用について
  • 主な事前対策について
  • 相続法の改正について

とんでもなく内容が多く見えますが、参加者のニーズが高いものについては少し詳しめに、そうでもないものは簡単に説明します。

ですから、説明の途中でも遠慮なく質問ができるように、少人数で行います。(事務所が狭いという理由もありますが・・・)

<要項>

★ 日時   ・・・ 次の A か B からお選びください。

  A : 8月24日(土) 午前10時00分 ~ 午前11時30分

  B : 8月27日(火) 午前10時00分 ~ 午前11時30分

★ 場所   ・・・ 当事務所内 https://gyoseisyosi-sawada.com/アクセス

★ 人数   ・・・ 3名以内

★ 費用   ・・・ 1000円(資料代を含みます)

★ お申込みはこちらから → https://gyoseisyosi-sawada.com/お問い合わせ/

なお、「興味はあるけど日程が合わない」という方は、御遠慮なく御相談ください。

子供を預かる施設こそBCPが必要、という理由

 保育所・幼稚園・小中学校等の子供を預かる施設で、BCPを策定しているところはどのくらいあるのでしょう?

 私はこのテーマについての統計データを持っていないので、わからないのです。ただ、これだけは断言したい。

 子供を預かる施設もBCPを策定すべきです。

 BCPとは何かを簡単に説明します。BCP(Business Continuity Plan)は日本語で事業継続計画といいます。主に災害発生後の緊急対応が落ち着いた後、通常通りの業務ができるようになるまでの行動計画を指します。

 では、なぜ子供を預かる施設でも、BCPが必要なのか?

 理由は大きく分けて2つあります。1つは、言うまでもなく子供および保護者のためです。2つ目は、職員のためです。

「子供と保護者のためにBCP」という理由

 BCPは災害発生後に、必要に応じて発動させます。ではBCPが必要な時とはどんな時かというと、施設を含む地域に甚大な被害が生じたときです。

 そういう時、まず、保護者の生活はどうなるでしょうか?

 今や多くの保護者が仕事を持っています。その仕事の再開に向けて動く必要がありますよね?また、家屋も被害を受けているかもしれません。その復旧や、罹災証明取得等の手続きがあります。もし、家族にケガ人いたら?そのほかにも水・食料の確保などなど、普段の生活より忙しくなります。こうしたことも重なり疲労が蓄積していくわけです。

 普段より、一時でもいいから子供を預かってほしい、というニーズが高まっているのではないですか?

 子供にしても、不安を抱え、心理的なケアを必要としている子が増える時期でもあります。カウンセラーなどが派遣されたりもしますが、普段、身近に接している大人の方が安心できることだってありますし、そうした人たちだからこそ、深刻な変化に気づくかもしれません。

 少し年齢が上がれば「自分も復旧の役に立ちたい」と考えるかもしれませんが、平時より環境的に危険因子が高まっている時なので、ボランティア活動に参加させるにしても成人の支援が必要でしょう。

 つまり、保護者は、自らの復旧活動を支えるためにも子供を預かってほしい時期ですし、子供自身も身近な大人にそばにいてほしい時期でもあります。普段通いなれた保育園・幼稚園・学校ほど、そのニーズに適した場所はない、と私は思うのです。

 だからこそ、子供を預かる施設は、発災後、早期に業務を再開する必要がある。たとえそれが、一日の内の短時間であっても、です。

 しかし、建物や敷地に被害があるかもしれません。断水や停電等がおきているかもしれません。トイレもすべては使えないかもしれません。平時と同様の規模で子供を預かることには無理が生じます。

 子供・保護者のニーズは高い一方で、環境的な問題がある。だからこそ、BCPを策定・周知し、リスク・コミュニケーションによって相互理解を進めておくのです。

「職員のためにBCP」という理由

 子供のためにも、保護者のためにも(つまりは地域のためにも)子供を預かる施設の早期の再開は必要です。

 しかし、忘れてならないのは、職員も被災者だということです。

 BCPが必要になる状況を想像すれば、職員も被災者であることは容易に理解できることです。つまり、職員の自宅も被害を受けて、職員の家族も支援が必要になっており、職員の生活のために水・食料等を確保しなければならないのです。

 職員も、平時同様に勤務することはできないのです。それは本来、公務員であっても同じはずです。

 公務員が「全体の奉仕者である」ということの意味を間違えてはいけないと思います。「一部の者への奉仕者ではなく全体の奉仕者」なのであって、「どんな時も奉仕に徹せよ」ということではない。「奴隷的拘束」を受けないのは、公務員も同様です。

 つまり、職員一人一人の勤務時間を減らす必要があるのですから、業務の規模は一定期間は縮小せざるを得ないはずです。

 子供・保護者のニーズに応えることと、職員とその生活の保護の調整を図るためにも、BCPの策定は必要なのです。

 BCPを策定するのは、手間がかかります。平時から業務繁多の施設で、BCP策定にかけるゆとりはないかもしれません。でも、もしまだ対策を立てていない施設で、上記のことからBCP策定の必要性を御理解いただけたなら、方針だけでも早急に立ててほしいと願います。方針が立てられれば、あとは、定期的に開かれる会議・打合せで少しずつ対応を決めていけばよいのですから。