贈与

遺書を書いている人のイラスト(女性)

お金や、物などを他の人に無償で与えることを、贈与と言います。

誕生日のプレゼントや、お正月のお年玉も贈与です。

お年玉くらいならば、もらう方もあげる方も気分よく気軽にできますが、もう少し額の贈与になると、いくつか注意する事が出てきます。

※ちなみに新型コロナの時の持続化給付金は「政府と申請者の贈与契約」でした。

1.贈与契約

契約書のイラスト(印鑑)

 様々な約束の中で、法律によって実現することが期待できるものを契約と言います。(実現できない時には裁判に訴えることも可能)

 贈与契約というのは、贈与者(与える人)が受贈者(受取る人)に、特定の財産を与えることを約束し、受贈者がそれに同意することで成立します。

 大切なことは、贈与者と受贈者の合意です。

 合意さえすれば、契約書のような書類がなくても法律上は成立します。

法律上の言葉

 法律上の言葉 言葉の意味など
贈与自分の財産を無償(対価を受取らない)で、相手に与えること。
<注意>
借金の返済を免除してもらったり、支払いを肩代わりしてもらうような場合も、贈与にあたります。
贈与者財産を与える人(又は団体・法人)
受贈者財産を受取る人(又は団体・法人)
履行(りこう)契約したことを実行すること。
贈与契約の場合には、契約に従って財産を与えること。

特殊な贈与

(1) 定期贈与

「毎年、誕生日に〇円あげる」というように、一定期間ごとに財産を贈与する契約です。

贈与者又は受贈者の死亡によって、この契約は終了します。

定期贈与の場合には、贈与税がかかることがあるので注意を要します。

(2) 負担付贈与

受贈者にも、何らかの負担をしてもらう贈与契約です。

例えば「老後の生活の面倒をみてもらうことを条件に住宅取得資金を贈与する」というケースは、負担付贈与にあたります。

(3) 死因贈与

贈与者の死亡によって効力が発生する贈与契約です。

贈与者の生前に、受贈者と合意している必要があります。

一方で、遺言で「家は妻に遺贈する」というように書く場合は、「遺贈」と言います。

遺贈は、遺言を残す人の想いだけで成立します。つまり受取る人の事前の同意がいらない所が死因贈与との違いです。

(4) 寄付

民法上の契約の種類に「寄付」という言葉はありません。寄付は贈与として考えられるからかもしれません。

寄付の場合、「誰が受贈者か?」という点は気を付けた方がよいでしょう。

例えば災害が発生した時に、コンビニなどに募金箱が置かれたりします。その募金箱に寄付をする人は、お金を集めているコンビニにお金を贈与したわけではないですよね。あくまで受贈者は被災者であるはずです。

では、この場合のコンビニの役割は何か?

募金箱に入っているお金を一旦預かって、それを後日、被災者に届ける役割を担っているわけです。こうした役割の人を受託者(あるいは受任者)と言います。

受託者が寄付金を勝手に使うと、横領罪に問われたり、利息を付けて返金した上で賠償責任を負わなければならなくなったりします。

2.贈与契約が成立した後

 贈与は、法律上の契約になるので、贈与契約が成立するとその内容を実行する責任が生じます。

 つまり、贈与者は「あげる」と約束した財産を受贈者に与える義務が生じます。

 この受贈者に与える財産も、契約の目的に適っている必要があります。

 もし、与えられた財産が契約の目的に適っていなかったらどうなるか?

 その時には、受贈者は「契約通りの財産をください」と請求するか、損害賠償を請求するか、契約を解除することができます。

 一方、負担付贈与の場合は、受贈者も契約で求められた責任を果たす義務があります。

3.贈与契約は解除できる?

 贈与契約に従って、相手にお金や物を渡した後は、それを取り戻すことはできません。

 贈与契約書を作成した場合は、まだ相手にお金等を渡していない時であっても、その約束を反故にすることは原則的にはできません。

 しかし、次の場合には贈与契約を解除することができると考えられます。

  ①贈与者と受贈者が解除に合意した場合。

  ②負担付贈与の場合に、受贈者に求められている行為を行わない場合は、贈与者は解除できる。

  ③契約内容に合った物を受取れない場合に、受贈者は解除できる。

 ①のような円満な解除を除いて、贈与を解除する場合には弁護士に御相談なさった方がよろしいかと思います。

また、贈与契約の解除も贈与税との関りがあるので、税理士にも御相談なさってください。

4.贈与税は?

 他人から無償で、金銭や、不動産などの金銭的価値のある物をもらった人は、贈与税の申告をする必要があります。

 具体的には、毎年1月1日~12月31日までの1年間に贈与された合計額が、110万円を超えていたら贈与税の申告をしなければなりません。

 贈与税には、贈与に応じて様々な制度が用意されています。詳しくは、下の国税庁のウエブサイトを御覧ください。

贈与税|国税庁 (nta.go.jp)

 なお、終活の一環として生前贈与をお考えの場合には、合わせて相続税についても御覧になられた方が良いかと思います。

相続税|国税庁 (nta.go.jp)

 「贈与税などの基礎的なことだけ知りたい」という方は、当事務所の簡単な解説動画を御覧ください。

動画のリスト | 澤田行政書士事務所 (gyoseisyosi-sawada.com)

5.贈与と相続

遺産争いのイラスト

 終活の一環として生前贈与を検討する方は、税金のことだけではなく、相続が発生した時(つまり御自身が亡くなった後のこと)のことも、一度お考えになられた方がよろしいと思います。

 民法上は、遺産分割にかかわる次のような規定があります。

  ① 配偶者を除いて、子供間では遺産は同じ割合で相続する。

  ② 遺言で①とは違う割合で遺産の分け方を指定したとしても、遺留分という絶対的な権利が各相続人にはある。これを放棄できるのは原則として相続人本人のみ。

  ③ 遺産分割の時には、生前贈与の分も含めて計算をする。

 こうした知識は広く普及しているため、自分の権利に敏感な方は多くいらっしゃいます。

 その結果、良かれと思って行った生前贈与が、遺産分割の時にトラブルの種になることもしばしばあります。中には、親族関係の断絶にまでつながる悲しい事態に発展してしまったということも、よく聞くことです。

 そうした事態は、贈与される方の本意ではないはずです。

 ですから、生前贈与を検討する時には、税金以外の側面にも御留意ください。

キーワード~贈与する時の注意事項として

贈与をする時には、相続時のトラブルを防止する観点から、次の3つキーワードを心に留めていただけたらと願っています。

① 理解!

 贈与税の大まかな事柄については、与える人と受取る人の両方が理解した上で贈与契約を結んだ方がよいと思います。

 特に、相続時精算課税制度を利用なさる場合には、受贈者の制度への理解が不可欠です。

② 納得!

 相続時のトラブルを防止する観点から、御家族全員が、その贈与について納得してから行ったほうが良いことは言うまでもありません。

 例え賛成を得られないとしても、納得してもらうように努力することは大切だと私は思います。

 「どうせ理解は得られない」からと言って、コッソリ贈与することだけは避けるべきです。

③ 記録!

 贈与税や相続税の計算だけでなく、遺産分割時の話し合いでも、生前の贈与分を考慮する必要があります。

 また、遺言を書くときも、遺留分への配慮が大切になります。

 そうした場面に備えて、生前贈与については記録を残すことが大切です。

記録する場合には、次の項目が記されるように意識してください。

  • 贈与の年月日
  • 贈与の相手(受け取った人、与えた人)
  • 贈与した財産 (金額、不動産の表示、評価額など)
  • 贈与の目的 (例として、「教育費」「住宅取得資金」「生活資金」「開業資金」など)
  • 負担付贈与の場合には、受贈者の負担内容

 

6.贈与契約書

贈与契約書がなくても贈与契約は成立します。

一方で、不動産を贈与する時には、所有権の移転登記が必要になりますが、この際に贈与契約書の添付が必要になります。

その他に、毎年のように暦年贈与を行っている場合など、贈与契約書を作成した方がよい事もあります。

(定期贈与の場合は、毎年の金額が110万円に至らなくても贈与税が課税されることがあります)

様々なトラブルを防ぐ観点から、私は契約書を残すことをおススメします

印紙

契約書には印紙を貼り、消印をするのが原則です。

贈与契約書の場合は、次のようになります。

●贈与するのが金銭だけなら印紙は不要。

●不動産の贈与なら、200円の印紙。

●負担付贈与なら、その価額に応じた印紙が必要。

※電子契約書の場合は印紙は不要です。でも私は、贈与契約書を電子契約書として保存するのは、今は止めておいた方が良いと考えています。

当事務所では

当事務所では贈与に関する御相談も承ります。相談料は45分毎に4,000円です

※贈与税や相続税について、財産の評価額や税金の額などの具体的ことは、税理士に御相談ください。

贈与契約書の作成について、下記の報酬でお引き受けいたします。

契約書について 報酬額 備考
金銭だけの贈与契約書 15,000円  
不動産を含んだ贈与契約書 20,000円 贈与する不動産の数が2個を超える場合には1個につき1,000円加算
負担付贈与契約書 25,000円~100,000円  
上記の贈与契約書に確定日付を公証人に付与してもらう場合 上記の金額に5,000円加算 他に公証人手数料として700円
公正証書による贈与契約書の作成支援 30,000円 他に公証人手数料がかかります。

※上記の金額に出張料、交通費が加算されることがあります。