備えあれば患い無し~貞観政要~

by Bin co

先日、「地域防災とまちづくり」( 瀧本浩一著 イマジン出版) という本を読みました。

著者の瀧本先生は山口大学准教授で総務省消防庁消防大学の客員教授も兼ねておられる方で、いくつかの県で防災アドバイザーをされている方です。

この本の「おわりに」で先生が紹介していたのが、貞観政要(じょうがんせいよう)の上の言葉です。

今まさに世界中が新型コロナウィルスという災害に遭っている時に、少し場違いな感が無きにしもあらずですが。

しかし、こうした最中でも「自分は大丈夫」と思っている方もおられるかもしれませんし。自戒も込めて載せることにしました。

「備えあれば患い無し」という言葉は、防災に関連してよく使われる言葉ですが、その出典の1つが貞観政要なんですね。

貞観政要では、「安きに居りて=平和な時」に思う「危うき=危機」というのは、何も災害に限ったことではないようです。

でも、今、報道されている各国の対応等を鑑みて、やはり平時つまり「安きに居る」ときに何をしていたのかが、大事だなと思う次第です。

今、瀧本先生の指摘を受けて、「貞観政要」(呉兢編纂 守屋洋翻訳、ちくま学芸文庫)を購入し読んでいるところです。正直、冒頭からため息をつきながら、辛い思いをしながらの読書です。

なお、冒頭の画像にある漢文を書いてくださったのは、書道家のBin co さんです。

高齢者と自動車の運転

40歳から50歳台になると、自分の親の車の運転について気になる方も増えてくるかと思います。

最近の報道によれば、免許返納をする高齢者が増えたそうですが、一方で、交通事情などの都合により運転せざるを得ない方もいるのは事実です。

動体視力が衰えや視野が狭まり、5感に対する反応・判断も遅くなり、運動能力も衰える。同時に複数の処理をこなす(世間話をしながら運転をするなど)ことが難しい。

そうした高齢者の特徴のうち1つでも、親の行動に兆候が見られるようになったら子供としては心配になるのも当然でしょう。

私も周囲に高齢ドライバーがおり、どのようにすれば良いのか考えることが増えました。そこで読んでみたのが、この本です。

高齢ドライバー」(所正文、小長谷陽子、伊藤安海 著 文春新書)

3人の著者は、それぞれ交通心理学、認知症専門医、交通科学を専門にされている研究者だそうです。その知見をもとに高齢者と運転について書かれたのが、この本です。

この本を読んで、私が感じたこと考えたことを以下に記してみます。

何よりもまず、高齢者が運転をしなくても良い環境や条件を整えることが大切なんだということです。

  • 重要施設が集積している街づくり
  • 高齢者も安心して歩ける歩道のある道路
  • 公共交通機関の充実
  • タクシー定期券

のようなインフラや仕組みづくりももちろんですが、

  • 歩行者を優先する運転マナー(イギリスのGive Way(相手に道を譲る)の精神・・・上記の本のP.108)
  • 気楽に車に同乗させてもらえる人間関係
  • バスの待ち時間を楽しめるゆとり空間や気持ち
  • 徒歩圏内で満喫できる趣味・娯楽・仲間

といった、ソフト面も重要です。

子どもから「そろそろ運転を止めたら?」ということも場合によっては必要だけど、運転しなくてもよい環境や条件を一緒に考え、確かめてみることも必要なのかもな、と思いました。

その上で、どうしても運転が避けられないならば、上記の本のp.34で指摘している次の3つの運転行動を徹底する。

  1. 運転を昼間限定にする。
  2. 居住市町村内と隣接市町村内に運転エリアを限定する。
  3. 1週間の走行距離を100㎞程度以内にし、1日の距離もできるだけ少なくする。

さらに、急発進防止装置などの安全装置の行き届いた自動車を運転するように心がけるべきでしょう。

急発進防止装置は後付けできる物もあるようです。例えば、オートバックスのこちら。私は使用したことがないので、性能についてはお店で聞いてください。

https://www.autobacs.com/static_html/spg/pedal_mihariban/top.html

なお、75歳以上で運転免許の更新時、または一定の違反行為をした時に「臨時認知機能検査」を受けます。ここで「認知症のおそれ」の判定があると「臨時適性検査」か「医師の診断」を受けなければなりません。その結果、認知症と診断された場合は、運転免許の停止または取り消しになります。

こうした高齢者の運転免許制度については、以下のJAFのサイトが分かりやすいかと思います。 

http://qa.jaf.or.jp/accident/license/03.htm

「高齢ドライバー」という本を読んで、「日本という国は、いろんな意味で車優先社会であり、各自が車を所有することを半ば前提として街づくりをしてきた国なんだな」とも思いました。

信号が青のうちに渡り切れないほど広い車道が必要なのは、その1つの証でしょう。

高齢社会となり、人口が減少していくこの先。社会や経済の在り方も含め考え直していかなければならない時期かもしれません。

私も50代半ば。20年後までには自分で運転しなくても良い仕事や生活の仕方を作り上げなくてはなあ、ということも、この本を読んでの感想です。

親のトリセツとユマニチュード

私の母も80歳を超え、大分、老いを感じるようになりました。話しかけても反応がなかったり、歩くスピードもずいぶん遅くなりました。

でも、私の言っていることが理解できないのではなく、恐らくは聞こえづらかったり、考えたり思い出したり判断したりするのに少し時間がかかるだけだったりします(その証拠に、私が母の反応を待つのを諦めたころに、ゆっくり話しだしたりします)。自分の考えを持っており、口出しされると無言で拒絶したり、時には反抗もしたりします。

少し前に「『年を取ったな』と実感する時」というタイトルで、何かのきっかけがなければ自分の年齢について考えることはない、という旨の投稿をしました。

母くらいの年齢になれば、さすがに自分の年についての自覚はあるでしょうけれど、「自分にできること」とか「自立への意思」のようなものは維持しているのではないでしょうか?

このことは御高齢の方と接する時にも心がけておきたいことだと私は思っており、それに関する本を2冊御紹介いたします。

  • 「精神科医が教える 親のトリセツ」 保坂隆著(中公新書ラクレ)
  • 「ユマニチュード入門」 イヴ・ジネスト,ロゼット・マレスコッティ著本田美和子訳(医学書院)

1冊目の「親のトリセツ」の著者、保坂隆先生は、聖路加国際病院で診療教育アドバイザーをなさっている精神科医です。その豊富な御経験から、高齢者の心理を踏まえた接し方について、様々なアドバイスをまとめたのがこの本です。

内容としては運転免許証の返納にかかわることや、家の片づけ、相続など、高齢になった親に関する様々な心配事に対し、どう関わったらよいかが丁寧に書かれています。どのケースにしても、本人の意思の尊重が土台にあり、その本人の意思決定をどう支えていくかという視点が貫かれているように私は読みました。

2冊目の「ユマニチュード入門」は、認知症ケアの世界的な第一人者であるイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏が、その魔法とも言われるような技法の基礎を紹介した本です。テレビでも放送されたことがあるので、御存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この本には「ユマニチュードの4つの柱」として認知症の方への接し方、「心をつかむ5つのステップ」として認知症の方を訪問するところから退室するまでのおおまかなコミュニケーションの取り方について紹介されています。

4つの柱は認知症の方の体の支え方などの技術なので、多少の訓練が必要かと思いますが、5つのステップは完璧なものでなくてもマネをすることはできそうです。

何よりも、このユマニチュードで「認知症の方の人権」ということを私は考えさせられました。

超高齢化社会の日本。実行できるできないにかかわらず、多くの人とこれらの本で紹介されている知識を共有出来たらいいなと思います。

昨日は臨時休業でした

昨日(9月9日)の台風で、被害に遭われた方々に、お見舞い申し上げます。

昨日朝のNHKのインタビューに「これから修学旅行に行くために、羽田空港に向かう」と答えていた高校生は、その後どうなったのでしょう?記憶によれば「とりあえず空港に集合」と学校から言われたから、羽田にタクシーで行こうとしていたらしいのです。学校からそう連絡されたのが、いつの時点だったのか?他人事ながら心配になってしまいました。

さて、当事務所は昨日は臨時休業にいたしました。午後から中小企業庁主催の「中小企業強靭化対策シンポジウム」がありましたが、これももちろん欠席です。

このことは、前日の夜には9割がた決めていました。

日曜の天気予報では、私のいる仙台は9日(月)のお昼くらいに暴風域が近接すること。この台風は小さいけれど、勢力が強い(960~980hPaほど)まま近づいてくること。仕事としては、月曜に何がなんでも事務所に出勤しやらなければならない仕事はなかったし、午後のシンポジウムは楽しみにしてはいたけど、体を張って聞かなければならない必須のものでもない。

以上が、臨時休業決定の主な理由。

結果的には幸いなことに、住まい周辺も事務所所在地も「台風が来た」というほどの荒れ方ではなく、普通に出勤し、シンポジウムにも参加できるような風雨でした。

ただ、こうなることは、つまり「臨時休業するほどのこともないかもしれない」ということは、日曜の時点でも予想はしていました。だから後悔はありません。シンポジウムはちょっと残念でしたけど、自分ではやむを得ない選択だったと思います。

そして、こうした「空振り」覚悟の、過剰とも言えるかもしれない安全志向こそが、防災には大切なのだと信じてもいます。

BCP(事業継続計画)は、災害発生後にできるだけ速やかに事業を再開し、損失を最小化するための計画と言えます。でも忘れてはならないのは、まず全ての関係者の人命を守るために最善を尽くすことです。命の安全が図られて、初めて事業が継続できるのです。

防災教育に携わってきた片田敏孝先生が、東日本大震災前に関わっていた岩手県釜石市の児童生徒に伝えてきた避難三原則「想定にとらわれるな」「その状況下において最善を尽くせ」「率先避難者たれ」は、防災への取組の基礎基本だと私は思っています。

(参考「 子どもたちに『生き抜く力』を ~釜石の事例に学ぶ津波防災教育~」 片田敏孝著 フレーベル館)

今回の当事務所の臨時休業は、この原則にそったものだと私は言いたいのです。

防災やBCP策定支援を業務の1つとしている私は、そこは譲れません。

羽田に向かった高校生は、修学旅行に行くどころか、羽田に行くことすら困難だったでしょう。もし、連絡が行き違いで自宅に戻ることになったとき、何時くらいに家についたのでしょうか?

昨日のニュースで見た出勤のために駅で電車を待つ人たちの長蛇の列。送電線の鉄塔やゴルフ場の防球ネットが倒れ、電柱が折れ、死亡された方すら出た関東での光景です。

あれはやむを得ないことだったのでしょうか?いつにも増す長時間の混雑の中の出勤で、仕事になったのでしょうか?事前になんらかの対策はできなかったのでしょうか?

台風シーズンは、まだ続きます。

それぞれの職場で、対応を考えてみてはいかがですか?

「いのちを守る気象情報」という本。おススメします

「いのちを守る気象情報」(斉田 季実治著 ・ NHK出版新書 )という本は、気象災害から身を守るための知識を、一般の人が仕入れるには丁度いいと思います。

著者の斉田さんは、NHKの午後9時台のニュースで天気予報等を担当している気象予報士であり、また防災士の資格もお持ちの方です。

本の内容は、ニュースの気象に関わるコーナーで、少し詳しめに解説していることをそのまま新書用にまとめた感じ。ただ、本にするためにTVよりほんの少し詳しく書いているかもしれません。

理科が苦手でもTVのニュースならわかる、という人には十分納得できると思います。

またこの本は、地震や台風といった「メジャー」な災害だけでなく、大雪や噴火、竜巻といった比較的よく遭遇する人と、ほとんど遭遇することのない人に分かれがちな自然現象も取り上げている所が、私は良いと思いました。

こうした部分は、読まずに飛ばしたとしても、何かの折に「ちょっと目を通す」だけでも(言ってみれば気象に関する辞書のような使い方)大変に参考になる。

例えば「冬の北海道に行く時に、新幹線や飛行機の中で大雪の章を読んでおく」という使い方もアリかなと思います。

仕事の仕方を人に合わせる

何年か前に「日本でいちばん大切にしたい会社(坂本光司著、あさ出版)」や「虹色のチョーク(小松成美著、幻冬舎)」を読んで、「人と仕事」の関係について考えたことがあります。

この2冊が描いているのは、日本理化学工業株式会社での障碍者雇用についての取組みです。

日本理化学工業は社員の70%が知的障碍者という会社です。そして主力商品のチョークについては国内シェアの30%以上を誇るトップメーカーでもあります。私がかつて勤務していた学校でもよく見かけたチョークを作っている会社だったのです。

なぜ知的障碍者を多く雇用しながら、トップメーカーであり続けるのか?詳しいことは、上記の本か日本理化学工業のホームページをご覧いただきたいのですが、一言で表せば、「仕事の仕方を人に合わせる」ということなのだと私は思います。

知的障碍者にも、安全でわかりやすく、一定の水準の製品を作り続けられる作業工程を工夫する。言葉にすればただこれだけの事だけど、それをやり遂げるのは並大抵のことではないと思います。

何よりも「その作業は何のためにやるのか」ということを、突き詰めて考え抜かなければ、そんなことはできっこありません。

つまり、障碍者のための作業工程を考えるということが、その仕事の本質を見極めることにつながっているのです。

その上で作業を標準化していく、即ち、誰もがその仕事をできるようにする。しかも製品の水準は保ったまま。経験とか勘に頼っていた部分も、可能な限り分析し、時には分かりやすい言葉や記号で表現して伝えていく。

でも、これって「障碍者のため」だけになることではないですよね。

例えば最近、農福連携が注目を浴びています。農業の現場に障碍者を受け入れ、ともに作業を行う取組みです。

「食料・農業・農村白書~令和元年版」(農林水産省編)には、農業経営者が障碍者を雇用するにあたって、作業工程の標準化のためにGAP(農業生産工程管理)を活用し、生産性が向上し賃金増にもつながっている例が紹介されています。

日本理化学工業だけではない様々な事業で、人に合わせた作業工程を考えることで、実績をあげているのです。

私たちはもしかすると「仕事に人を合わせる」ことを重視してきたのではないでしょうか?あるいは、もう少し大きく「社会に人を合わせる」と言ってもいいかもしれません。

別の言い方をすれば、人が社会に適応するとか、仕事に慣れるとか。適応した状態を指して「成長」とか。

これはこれで大切な一面はあります。

小中学校が目指していることの1つがまさに「社会への適応」です。この社会で生きていくために必要なスキルを身に着けるのですから。

けれど、この社会や仕事への適応を重視しすぎるとどうなるでしょう?

適応できない者を自己責任だからと排除し、「能力に応じて」などと低賃金の非正規労働として雇用調整の安全弁とする。

仕事の見直しよりも人の適応能力に目が向くために、仕事は従来のまま改善されずに放置され、一向に生産性があがらない。働く人の幸福感や満足感にもつながらない。

本来、社会や仕事は、人を幸福にするためにあるのだと私は思います。けれど、そこには逆転が生まれている。社会や仕事のために人がいる。つまり、人を社会や仕事の道具にしてしまっている。

だからこそ、今、社会や仕事を人に合わせて見直し作り直していく、ということを意識的に取組んだ方がよい。その1つのきっかけが、障碍者の雇用だったり、高齢者や妊婦、子供を持つ親、ガンや精神疾患などのような長期にわたり医療的ケアが必要な人たち、などの労働条件の見直しだったりするのだと思います。

そしてまた、社会や仕事を人に合わせることは、リスクマネジメントの上でも重要な視点にもなるはずです。このことについては、いずれまた。

多面的機能の発揮の促進に関する法律

土日、「季刊地域」という雑誌に思わずはまってしまいました。その中で「多面」という言葉がいくつかの記事に出ていたので、気になって調べたのです。

農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律

世の中には、私が目にも耳にもしたことのない法律は山ほどありますが、これもその1つでした。

以前からあった農山村の地域や営農を支援する制度のいくつかをとりまとめ、平成27年4月から施行されているものらしいのです。

この法律に基づいて実施されている制度は3つ。

多面的機能支払交付金。農家等で組織を作り共同して、活動地域の農地を維持するための施設を整備したり補修したり長寿命化を図ったりする活動に、国・都道府県・市町村から交付金が支給される制度。

中山間地域等直接支払交付金。山村等の農業生産条件が不利な地域の農業生産活動を支援する制度。

この二つは、高齢化等で、1つの農家の努力だけでは用水路の整備や、畦の補修やらが難しくなったり、耕作放棄地が増えて様々な問題に発展するのを防ぐことも目的みたいです。

もう一つの制度が環境保全型農業直接支払交付金。地球温暖化防止や生物多様性の保全のために、化学肥料・農薬を減らす取り組みや、カバークロップという作物を作らない期間に土壌侵食の防止を目的にイネ科やマメ科などの植物を作付けする取組を支援する制度。

食料の生産・供給だけではない農地の機能。それは作付面積の広大な農地だけではなく、古くからある棚田のような小さな田畑を守ることは、環境や生物の保護、防災の観点からも、あるいは文化の伝承や、もしかしたら働き方・生き方の観点からも大切なのかもしれません。

私もせっかく行政書士という仕事に関わっているのだから、もう少しこれらの制度を勉強し、関わっていけたらいいなと思った本日でした。