人が亡くなった後には、やらなければならないことが山積みです。
法律で定められた手続きから、形見分けや遺品整理など様々あります。
では、こうした手続きをする人って、どなたでしょうか?
もし、あなたの死亡直後から始まる様々な手続きをしてくれる人がいないならば、元気なうちに、そうした事務を引き受けてくれる人を探して、お願いしておかなければなりません。
このような、死亡後の事務をあらかじめ依頼しておくことを
死後事務委任契約
と言います。
※法定後見の場合に、緊急対応として死後事務が法律で規定されていますが、ここで説明するのは、生前に御本人が家族以外の者との契約についてです。
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1.死後事務委任契約の内容
死後事務委任契約の内容は、大きく7つの内容に分けられます。
もちろん、これらを全て依頼する必要はないし、付け加えることだってできます。
大切なことは、依頼する方と引き受ける方の合意です。
(1) 法律で必要な手続
主なものとしては以下のことが挙げられます。
- 年金や健康保険・介護保険関係の手続
- 所得税の準確定申告
上の手続をするために、税理士や社会保険労務士等に委任することも含みます。
(2) 費用の支払
医療費や介護等、死亡によって支払額が確定しているものや、他の手続をするために必要な費用の支払をします。
(3) 契約の解約や名義変更
- 電気・水道・ガスなどのライフラインの契約
- 電話、新聞・NHK受信契約など
- アパートや貸家、駐車場などの賃貸借契約(借主の場合)
- その他
注意したいのは、預貯金口座や自動車、不動産などの資産です。
こうした資産は後でも触れますが、遺言でその処分方法を決めるべきものなので、死後事務委任契約の内容としては不適当です。
(4) 遺品の整理または処分
故人の所持品を整理し遺族に引き渡したり、廃棄処分したりします。
遺品を処分する専門業者への依頼も含みます。
換金した上で相続人に相続財産として引き渡すことも有り得ます(相続人の意向も大切です!)。
換金は難しいけれども故人を偲ぶ物については、形見分けとして友人・知人等にあげることも考えられます。
(5) 葬儀・埋葬に関わること
お葬式や埋葬に関わることも死後事務に含めて契約できます。
ただ、死後事務を相続人以外の者に依頼する場合には、葬儀等にかける費用が問題になることもあります。
ですから、できる限り生前に御本人と死後事務の受任者が共同で準備をしておくことが大切です。
(6) 相続財産を相続人又は遺言執行者へ引き渡すこと
原則として、故人が死亡時に所有していた財産は、すべて(負債も含めて)相続財産として相続人のものです。
ですから、死後事務として支払った費用を除いた残額は相続人に引き渡すことになります。
相続人がいない場合には、遺言であらかじめ処分を指定しておくか、相続人不存在として家庭裁判所に申立てる必要があります。
(7) その他
もしペットがいる時には、ペットの引受先に引き渡すことも必要です。
しかし、私は、ペットについては、事前に里親に引き渡しておくか、あるいは故人がお亡くなりになった後すぐに引取りに来ていただくように依頼しておくように、飼主が段取りをつけておくべきかと思います。
デジタル遺品
注意したいのがデジタル遺品です。
デジタル遺品とは、次のようなものです。
〇 デジタル機器の中に保存されているデータ
〇 インターネット関連のアカウント、ID・パスワードや、ブログ・SNS・クラウド等に保存されたデータ
SNS等を解約するとともに、これらに保存されているデータをどのようにするのか?ということも考える必要があります。
2.死後事務委任契約と遺言の違い
遺言も死後事務も、死亡後に行われる財産の処分であることは共通しています。
違いは、遺言は民法で決められていて、遺言書としての様式も厳格です。これは、場合によっては争いに発展しかねない事柄を、故人の意思の尊重という観点から規定されたものだと私は思います。
一方で、死後事務委任契約は依頼する方と引き受ける方との合意だけが重要で、後は当事者の自由です。
これは一見「何でもOK」と思われますが、反面、慎重に対応しないとトラブルに発展しかねない危うさもあります。
ですから、遺言書に書けることは原則として遺言に残し、それで不都合なものや遺言として残せないない事を死後事務委任契約に委ねた方が良いでしょう。
具体的には、死後事務委任契約の内容にする判断基準として、次のようなものが考えられます。
① 故人の死亡によって確定する債務で、できるだけ早く支払いを済ませるべきもの。
② 故人の相続財産の価値を保つ、あるいは著しく毀損しないようにすること。
③ 遺言事項にはならない事柄。
④ ペットのような他の命や健康の維持に必要なこと。
3.死後事務委任契約書を作成しておいた方が良いケース
自分が死んだ後に、いろいろな手続をやってくれそうな親族がいない
という方は、やってくれそうな人と死後事務委任契約を結んでおいたほうが良いです。
もう少しだけ詳しく書くと、次のアかイのケースです。
ア: 配偶者や子ども、その他の死後事務をしてくれる親族がいない方。
イ: 配偶者や子どもや親族がいたとしても、その方々に死後の事務をまかせるのが難しい事情がある方。
「親族」という言葉を赤くしておりますが、これは民法で規定している親族です。
内縁関係の方や、同性のカップルは含んでおりません。その他の同居人も含まれません。
内縁関係の場合は手続が認められることもありますが、全てのケースで認められるかどうかは難しいこともあると思いますし、認められたとしてもスムーズに手続が進められないこともあると思います。
また、同性カップルの場合は現状では死後事務を委任契約なしでやることは難しいと思います。
まして、それ以外の友人関係等の同居人であればなおさらです。
ですから、こうした法律上の親族以外の方に手続きをしてほしいならば、死後事務委任契約書を作成しておくべきでしょう。
イ 配偶者や親族がいたとしても、その方々に死後の事務をまかせるのが難しいケース
例えば、高齢者夫婦だけの世帯。あるいは、いわゆる「8050」と言われる御家族など、家族だけで死後の事務をやり通すことが難しいケースがたくさんあります。
こうした場合には、事前に行政書士などの専門職や、行政の福祉関係の部署等に相談なさっておいた方がよろしいかと思います。
4.契約にあたって注意すべきこと
死後事務委任契約を結ぶときに、注意すべきことがいくつかあります。
その中で、特に重要と思われる3点について簡単に説明いたします。
(1)遺言との関係
死後事務委任契約と遺言との関係については、上記「2 死後事務委任契約と遺言との違い」に記しました。
それ以外で注意すべき点は、遺言書を書き替えた場合などです。
死後事務委任契約と遺言書の内容が重なってしまうと、トラブルの元になります。
ですから、死後事務を依頼する方と引き受ける方の両方が、死後事務委任契約書と遺言書の内容を十分理解しておくことはもちろんですが、両者が定期的に会って依頼者の気持ちの変化などを確認した方がよいと思います。
(2)親族との関り
仮に配偶者やお子さんがいない方であっても、兄弟や甥・姪がいる場合があります。
こうした場合、遺品や現預金の扱いについて死後事務を請負った者との間で意見や考えの相違からトラブルが発生することがあります。
こうしたことを避けるためにも、死後事務の内容を明確にする必要があります。
それと同時に、本人、事前に死後事務を引き受ける者と、親族の内の中心になりそうな方の3者が生前に顔合わせをし、死後事務についての了解を得ておくことも1つの方法として考えられます。
(3)費用・手数料等の課題
死後事務にかかる費用や、事務を請け負った者への報酬は、当然のことながら御本人がお亡くなりになった後に支払われます。
つまり、適切に事務を行ったことを確認したり、報酬や費用を支払う方は誰なのか?という問題が死後事務委任契約にはあります。
推定相続人がおられれば、生前に事情を話して、事務の確認と報酬・費用の精算を依頼しておくことも1つの方法です。
死後事務委任を受任している専門職には、医療費等の支払や報酬金額相当分を事前に預かっておき、残金を精算書と共に相続人に引き渡す方もいらっしゃいます。
※死後事務にかかる報酬等の支払のできる、金融機関による信託サービスがあると良いのですが・・・。 現在、「死後事務を自ら請負う」、あるいは「提携する法人を紹介する」というサービスを行う信託銀行はあります。また、法定後見制度に関わる家庭裁判所の指示による支払いを行う金融サービスもありますが、単独の死後事務委任契約について、信託サービスを行っている所を私は確認できていません。
5.当事務所での死後事務委任契約
当事務所では、死後事務委任契約について、次の2つことをお引き受けいたします。
① 公正証書で死後事務委任契約書を作成するお手伝い。
② 当事務所の所長である澤田が死後事務を受任すること。
当事務所での死後事務委任契約の流れ
(1) 死後事務委任契約についての説明
個別の相談の他に、お知り合い(2~3人)と共同でのミニ・セミナー形式でも行います。
(2) 契約内容についてのヒアリング
死後事務の内容などを確認します。
御希望や、現在の状況、親族関係、財産関係などを詳しくお聞きしなければならないため、1回1時間程度の面談を数回行う必要があります。
(3) 契約書原案の作成
(2)のヒアリングの結果を、契約書原案としてまとめます。
契約書原案を確認して頂きながら、さらにヒアリングを重ね、御希望にあった内容に作り上げていきます。
(4) 公正証書にするための支援
契約書原案が固まった段階で、公証人に契約書を公正証書として作成して頂くよう手配します。
公証人は、元裁判官や元検事、弁護士などが就く法律の専門職です。
そのため、公証人が作成する公正証書は法的な効力が認められやすくなります。
★私以外の方との死後事務委任契約については、この(4)の段階まで当事務所でお手伝いをいたします。
(5) 生前にする事務
生前にできる準備活動や事務手続きは、御本人の指示・監督の元で済ませて、その分の報酬・手数料等も精算しておきます。
そうすることで、死後事務がスムーズに進むことと、死後の支払額を抑えます。
想定される生前の事務の例については、下の「報酬額」を御覧ください。
(6) 死後にする事務
死後にする事務は、契約書及び生前の打合せ通りに執行します。
可能な限り短期間で終了し、相続人あるいは遺言執行者に残余の財産を早期に引き渡せるようにします。
このため、事前の御本人や関係者との打合せが重要になります。
(7) 相続財産の引渡及び精算
残った財産や遺品は、すべて相続財産として相続人に引き渡します。
相続人がいない場合は、家庭裁判所が選定した財産管理人に引き継ぎます。
報酬額
Ⅰ 契約書の作成に至るまでの報酬額
委任パターン | 委任される事務の段階 | 委任される事務の内容 | 報酬額 | 備考 |
A | (1) | 死後事務委任に関する説明のみ | 10,000円 | 1回の面接で1時間半程度の時間を見込みます。 |
B | (1)~(3) | 死後事務委任に関する説明から契約書原案の作成まで。 | 50,000円 | 原案を納めた段階で終了します。 |
C | (1)~(4) | 死後事務委任に関する説明から公正証書による契約書作成のお手伝いまで。 | 60,000円 | 別途、公証人への手数料として1万円~2万円程度 |
※遺言書作成や任意後見契約(任意後見契約書作成のみの依頼を含みます)を同時に御依頼の場合には、重複する事務の分だけ、上記の報酬額から減額いたします。
Ⅱ 生前にする事務
委任項目 | 委任される事務の内容 | 報酬額 | 備考 |
面談 | 4,000円(1回45分以内) | ||
関係者との面談 | 緊急連絡先等に指定された御親族等との面談 | 10,000円(1人・1回につき) | |
葬儀関係 |
葬祭業者との打合せ (依頼者等が契約済みの場合) |
5,000円(1回) |
|
葬祭業者の選定・契約 |
30,000円~ |
||
埋葬・墓地関係 |
改葬の手続 (墓じまい) |
30,000円~(1件あたり) | |
墓地・散骨事業者との打合せ (依頼者等が契約済みの場合) |
5,000円(1回) | ||
墓地の契約・散骨事業者等の選定から契約 |
30,000円~ | ||
ペット引取り契約 | 死亡後にペットを引取って頂く方との契約書等の作成 | 21,000円~ | |
その他 | 10,000円~ | 御本人の御希望に応じ |
Ⅲ 死亡後にする事務と相続財産の引渡・精算まで
委任項目 | 事務の内容 | 報酬額 | 備考 |
死亡時の対応 |
|
10万円 | 緊急対応として出張や旅行等を中止した場合には、別途、5万円(海外旅行の場合は10万円)を加算します。 |
入院費、施設利用料等の精算 | 1件1万円 | ||
火葬・葬儀 |
あらかじめ指定された業者及び方法による葬儀を実施します。 |
10万円 | |
あらかじめ指定された方へ葬儀等の連絡 |
1件1,000円 | ||
遺骨の引渡・埋蔵・散骨 | あらかじめ指定された方法により実施します。 | 4万円 | |
行政機関への手続 |
健康保険、介護保険、年金の手続 所得税の準確定申告 |
1万円 |
税理士や社会保険労務士への支払が発生する場合があります。
|
税・社会保険料等の未払分の納付 |
1件5,000円 | ||
公共サービス等の手続 |
|
1件5,000円 | |
借家・アパート |
|
10万円 | 相続人が相続する場合を除きます |
遺品整理 | 形見分けの立会 | 2万円 | |
遺品の処分・保管・引渡し | 5万円 | その他に、事業者への支払が必要になる場合があります。 | |
デジタル遺品 | アカウントの解約・削除等 | 1件1万円 | 事前に契約していたものに限ります。 |
データの消去・保存 | 1件1万円 |
<想定される報酬額>
当事務所と死後事務委任契約を締結する場合、契約書の作成から生前の準備、死後事務までを含めて、
およそ30万円~50万円
とお考え下さい。
<報酬額についての注意事項>
★上記は一例です。契約の内容等によって変わることがあります。
(契約時のヒアリングの時に、お支払い可能額と依頼される事務の内容等を調整いたします)
★事務をする上で、他の事業者への支払いが別途必要になります。
★仙台市外で事務を行う場合には、別途、出張料・交通費を御請求いたします。