
町内会、自治会や集落のように、ある一定の地域の住民によって活動する団体を地縁団体といいます。
多くの地縁団体は、法律用語で言う「権利能力なき社団」として活動しています。権利能力なき社団は団体として活動はできても、団体として第三者と契約をしたり、団体名義で不動産を登記することはできません。
そこで地方自治法では地縁団体を法人化する手続きを定めました。
以下、その方法の概要をお示しします。
なお、「町内会や集落を法人化するメリット」については、別のページで考えます。
Table of Contents
1.地縁団体を法人にする方法
町内会や集落などは、市町村長の認可を受けることで法人になります。
株式会社や一般社団法人などのような他の法人とは違い、法務局に登記はしません。
2.法人にするための要件
地縁団体を法人にするためには、次の4つの条件(法律の言葉では「要件」)を満たしていることが必要です。
(1)活動の目的
地方自治法が法人化を認める地縁団体は、「良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし、現にその活動を行つている」と市町村長が認める団体です。
例をあげると、住民運動会や回覧板で住民同士の意思疎通や関係づくりを行ったり、道路や公園の清掃や草取り、ゴミ集積所の整備、防災・防火・防犯活動など、多くの町内会等が行っている活動そのものです。
逆に、同じ町内の住民で行う活動であっても、スポーツ同好会や音楽サークルのような特定の活動だけを行う団体は、この地方自治法による法人化は認められません。この場合は、一般社団法人等の他の方法で法人化を考える必要があります。
また、法人化を検討する段階で既にその団体が活動していなければなりません。少なくとも1年以上の活動実績が必要になるでしょう。
(2)地縁団体の区域
地縁団体は特定の地域に住む住民による団体です。そのため、その地域を明確に決める必要があります。
決め方としては次の方法が挙げられます。
- 「○○市◇町※※丁目」のように、住所で決める方法
- 「●●川と国道△号線で囲まれた地域」のように、川や道路などの地理的な方法
一般的には1の住所で決める方法かと思いますが、市町村長が認めれば2で認可申請をすることも可能です。
(3)地縁団体を構成する人
法人化する地縁団体を構成する人、つまりその地縁団体に加入できる人の条件は「(2)に定めた地域に住所があること」だけです。
他の条件を付け加えることは認められません。
つまり子供会や老人クラブのような年齢の条件や、婦人会や親父の会のような性別、日本人に限るような国籍条件、その他の条件をつける団体は、地縁団体として認可を受けることはできません。
さらに、地域に住所のある人が加入を申し込んだ場合、正当な理由がなければ加入を拒否することはできません。
また、その地域に住所がある相当数の人が団体に加入している必要があります。
この「相当数」の程度は、地域の特徴(都市部なのか、住民の結束の強い地域なのかなど)によって異なるので市町村長の判断によります。
一方で、相当数が加入していれば良いのであって、住民全員が加入している必要はありません。
というより強制加入は問題があると私は思います。
構成員に関わる注意事項
法人である地縁団体の構成員は、個人です。
多くの町内会等は世帯単位で加入していると思われますが、法人にする場合には個人で構成員名簿を作成しなければなりません。
さらに注意すべきは、総会の議決権も構成員1人につき1票が割り当てられるので、未成年者が構成員の場合には未成年者も1票の議決権を持つことになります。この未成年者の議決権は民法上、親権者の同意を得て行使する必要があります。
(4)地縁団体の規約
法人として認可を受けるには、規約が定められていなければなりません。 この認可の条件に言う規約というのは、会社で言えば定款に相当するものです。
この規約には少なくとも次の事柄が記載されていることが必要です。
- 目的
- 名称
- 区域
- 主たる事務所の所在地
- 構成員の資格に関すること
- 代表者に関すること
- 総会等の会議に関すること
- 資産に関すること
3.認可申請に必要書類(主な物)
地縁団体の法人化のための認可申請に必要な書類は、上に示した条件を団体が満たしていることを示すものです。
具体的には、次のようなものになります。
- 申請書
- 規約
- 総会議事録(法人化することを決議したことを示す内容)
- 構成員名簿
- 活動実績を示す書類(前年の事業報告が記載されている総会の議案書など)
- 団体の代表者であることを示す書類(承諾書など)
なお、上記の書類に加わるものがあるかもしれません。詳しくは市町村担当窓口に確認する必要があります。
4.法人化の主な手順
地縁団体を法人化する手順はおおむね次のようになります。
① 市町村の担当部署と事前相談
※事前相談をすることにより、後の準備がスムーズになり認可が受けやすくなります。
② 申請に必要な書類の準備
③ 総会の開催
※総会で「地縁団体を法人にする認可申請を行うこと」の決議をし、それを記載した議事録を作成します。
④ 申請書の提出
⑤ 市町村による審査
⑥ 認可
⑦ 市町村による認可の告示
⑧ 認可証明書の受領
認可証明書とは
株式会社や一般社団法人などの他の法人は、法務局に登記することで法人になります。
そして、重要な契約を行う時などには、法務局から登記事項証明書等を取得して相手方に提出することがあります。あるいは取引を考えている者は法務局から相手方の登記事項証明書を取得して、代表者等を確認することができます。
地縁団体の場合は、名称に「法人」という言葉がつかないので他に証明する物がなければ、法人か否かがわかりません。また登記もしないので、登記事項証明書等も法務局から取得できません。
その代わりに、認可をした市町村が地縁団体が法人になったときに告示した内容を記した証明書を発行してもらい、それをもって法人であることを示します。
この証明書は300円程度の手数料を支払うことで、誰でも取得できます。郵送による取得も可能です。
5.法人化に関わるその他のこと
法人化した地縁団体は、次のような手続や書類の作成が必要になります。
印鑑登録
「法人の実印」を作り、市町村に印鑑登録をします。これにより、市町村に印鑑登録証明書の発行を申請することができるようになり、また、認可地縁団体を代表する者であることを示せるようになります。
この印鑑登録は1つの地縁団体に1つの印鑑だけ登録が認められています。
財産目録の作成と備え置き
財産目録は法人になったときの他、毎年の定期総会に合わせて作成し、事務所に備え置かなければなりません。
構成員名簿の作成と備え置き
法人化した地縁団体は、構成員名簿を作成し、それを備え置かなければなりません。また、構成員に変動があった場合には、名簿も修正する必要があります。
定期総会の開催
法人化した地縁団体は、少なくとも事業年度終了後の年1回は定期的に総会を開催し、議事録を作成します。
法人化した地縁団体の不動産に関わる税について
① 不動産を取得したとき
法人化の前から地縁団体の構成員が共有していた不動産を、法人化した地縁団体名義にした場合は不動産取得税はかかりません。
しかし、法人になった後に、新たに不動産を取得したときは不動産取得税がかかりますが、地域の集会所用の不動産を取得した場合はかからない場合もあります。
不動産を取得する前に市町村に確認しましょう。
② 固定資産税
集会所のような一般的に町内会などが行っている活動に使う不動産は固定資産税がかかりません。また、ちびっ子広場や公園などのような地域の住民が自由に使用できる不動産もかかりません。
その他の不動産には固定資産税がかかります。
こちらについても市町村に確認するようにしましょう。
認可申請後に、地縁団体に変更があった場合
次の事項について認可申請の時の内容に変更があった場合には、市町村長に変更届を提出します。
- 名称
- 目的
- 区域
- 主たる事務所
- 代表者の氏名及び住所
- その他
ただし、規約そのものを変更した場合には、変更した規約を認可してもらうための申請が必要になります。
規約の変更には、総会で総構成員の4分の3以上の同意が必要です。しかし元の規約に別段の定めがある場合には、その定めによります。
★当事務所では
当事務所では、町内会・自治会・集落等の地縁団体が法人化設立の支援をいたします。
まずは初回相談後に正式に御依頼いただくか否かを御判断ください。
なお、下記の料金表のうち、「初回相談」「出張料」「交通費」「宿泊費」以外の料金は、すべて御相談に応じます。
※初回相談は地縁団体様の御希望の場所で行います。
項目 | 料金 | 備考 |
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初回相談 | 1万円(税別) | ・役員様との顔合わせ ・地縁団体の法人化に関わる概要の説明 ・当事務所へ御依頼いただく場合の依頼内容・料金について |
地縁団体法人化支援基本料金 | 15万円(税別)~ | 構成員の人数、作成する規約類により加算料金が生じることがあります。 |
出張料 | 半日(4時間以内)7千円(税別) 1日の場合は1万4千円(税別) | ※仙台市内の場合はかかりません。 ※当事務所からの移動時間も含めます。 |
交通費 | 実費相当 | ※仙台市内の場合はかかりません。 公共交通機関とレンタカー利用分は実費 自家用車利用の場合は |
宿泊費 | 実費相当 ※最低1万円 | ※宿泊が必要な場合に事前に御相談します。 |
なお、出張に関しては、次のように4回を原則しています。(初回相談を除きます)
ただし、地縁団体の担当者様との打合せ、その他の事情により出張を増減することは可能です。その場合でも最低2回(下記の1と2)は現地確認等も兼ねて出張いたします
- 担当者打合せ (地縁団体代表者様と委任契約の締結、担当者様と委任内容等についての打合せ)
- 市町村担当部署との初回事前相談への同行
- 認可申請書提出前の書類の確認 (書類に押印が必要な場合には、該当者に押印していただく)
- 認可証明書等の受領 (申請結果の受領)
その他
地縁団体が法人になった後の、次の手続についてもお手伝いいたします。
なお、出張料・交通費・宿泊費については上記と同じです。
項目 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
財産目録の作成 | 3万円(税別) | 法人税等の税の申告に関わるものは税理士に御依頼ください。 |
構成員名簿の修正 | 1万円(税別)~ | 修正人数が10名を越える場合には、加算料金が発生することがあります |
議事録作成 | 2万円(税別)~ | 議題、議事進行の状況により加算されることがあります。 |
規約変更の認証申請の支援 | 10万円(税別)~ | |
所有不動産の登記移転等に係る公告申請の支援 | 15万円(税別)~ |