下請法(正式には「下請代金支払遅延等防止法」)は、資本金(又は出資金)が1000万円以上の法人が請負った業務の全部または一部を、個人事業主や小さな法人に発注する場合に適用される法律です。
この法律では、下請の事業主に対して契約内容を記した書類を交付することを義務付けています。
「取引内容を記した書類」には、下請法が当てはまらないような契約にも参考になる項目があります。
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1.下請法が当てはまる取引
詳細は別ページ「親事業者と下請事業者の契約~下請代金支払遅延等防止法」を御覧ください。
★下請法が当てはまらない例
元請が資本金1000万円未満の法人なら下請法は適用されません。
他に、他のフリーランスが請負った仕事を振ってもらった時や、仲間に「一緒にやろう!」と誘われたようなときも下請法は当てはまりません。
★下請法が当てはまらくても・・・。
下請法が当てはまらないような取引関係でも、他の法律による規制が適用されることもあります。
例えば、独占禁止法。
こうした特別な法律の規制に関わらず、次のような目的のために、取引に関わる書類(あるいは電子記録)を作成し保存しておいた方が良いと思います。
●仕事上のトラブルの予防。あるいは早期解決。
●会計のための補助簿。
●新型コロナの際の持続化給付金のような、給付金や補助金を申請する際の基礎資料。
2.取引内容を記した書面の項目
項目 | 内容など | |
1 | 発注者、委託者や受託者 |
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2 | 業務の内容 |
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3 | 契約成立の日 |
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4 |
完成引渡しの日時や場所 または業務に従事する日時や場所 |
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5 | 完了検査について |
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6 | 料金 |
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7 |
・受託者が委託者等から提供される物や場所 ・受託者と委託者等の貸し借り |
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8 | その他 |
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3.依頼主が書面を交付してくれない時
下請法が適用されるような取引の場合には、発注者や元請事業者に、上記の内容を記した書面を下請け業者に発行することが義務付けられています。
でも、下請法を知ってか知らずか、書類を発行しない事業者は多いのが実態かもしれません。
また、下請けの事業者の方から「契約書作ってください」とか「発注書を出して」とか言い出せなかったり、そもそもそのような書面のやり取りの習慣がない事業者もあるようです。
下請法が適用にならないケース、中でも、同業者がメールで「〇月に△でイベントがあるんだけど、参加できる?」のような誘いに応じた場合などは、「契約書とかある?」とは言い出しにくいことも多々あるかと思います。
そういう場合には、どうしたらいいでしょう?
民法によれば契約は口約束でも構わないことになっています。つまり、書類に署名してハンコを押さなくても、お互いが合意していれば契約は成立するということです。
※商人の間の取引の定めのある商法にも契約書の定めはありません。
一方で契約書類には、「契約内容をはっきりさせて、トラブルから自分を守る」という側面があります。
そうであるならば、自分を守るための次善の策として、「合意した内容を自分で文字にして残しておく」ことは大切なんだろうと思います。
例えば、相手との仕事上のやり取りは、電話よりもメールでするのも1つの方法です。
※メールもプリントアウトしたり、スクリーンショットなどで画像として数年は保存しておきたいところです。
また、仕事の打ち合わせをする際に、上に書いた取引内容を記した書面の項目を意識して打合せしておくことも忘れないでください。
打合せ事項確認書
元請に契約書等を作成してもらえなくても、自分で書類を作ることは可能なはずです。
「契約書作ったので署名と印を押してください」と言いづらくても、「これまでの打合せ内容をまとめたので、確認してもらっていいですか?」とは言えるのではないでしょうか?
取引内容を記した書面の項目を1枚の紙にまとめることができない場合でも、その折々に大切なことを記録して、相手方に確認してもらえば良いでしょう。
可能であれば、確認した日付とサインを相手方に書いてもらいたいところです。
メールでのやり取りであれば、「修正する項目があれば、修正案を御記入の上、返信してください」と記載しておく。こうすることで、返信がなければ「修正はない」と見なしてしまうことも有り得ます。
以上の方法は「これでバッチリ!」とは言えないけれど、様々なトラブルを予防したり、万が一トラブった時にも早期の解決につながるのでははないかと私は思います。