知的障害があるなどの何らかの理由で、親が子の生活を支えている場合。
親の死後の子の生活支援をどうするか?という心配を「親なき後」と呼ばれています。
この親なき後の問題に対応する有力な手段の1つに、任意後見契約があります。
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子が未成年の内に、親権に基づいて任意後見契約を結ぶ
任意後見契約を結ぶ際に、「誰が任意後見人になるか?」という問題によって、契約の仕方や契約後の注意点が変わります。
専門職や支援機関等の第3者を後見人にする
契約の仕方としては、親が子の法定代理人として第3者と契約をします。
ただし、次の点に留意すべきです。
① 社会福祉法人やNPO法人等の何らかの障害福祉サービスを提供している事業者の場合、現在あるいは将来、利益相反にあたるケースもあり得る。
② 弁護士・司法書士・行政書士等の専門職の場合、契約期間中に専門職等が廃業・死亡するリスクがあり得る。
親が後見人になる
親が後見人になる場合は、家庭裁判所に子の特別代理人の選任を申立てて、その特別代理人と後見人になる親が任意後見契約を結ばなければなりません。
もし、特別代理人を立てずに親が任意後見人になる契約を結んでいる場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てて、その特別代理人に追認をしてもらう必要がある可能性があります。
※本人が成年になっており、判断能力が十分ある場合には特別代理人は不要ですが、そういうケースはほとんどないと思います。
子が成年に達している場合には、法定後見等の申立をする
法定後見等と等の字をつけました。
御本人の判断能力に応じて、支援の手厚い順(本人の自由度が少ない順(?))に後見・保佐・補助という3つの支援制度があります。
任意後見との違いは、大きなところでは次の3点です。
- 後見人・保佐人・補助人は家庭裁判所が決める。
- 後見人・保佐人・補助人の事務を家庭裁判所が直接、監督する。
- 後見人等の役割は法律または家庭裁判所の審判で決まる。
この法定後見等は、以前は弁護士や司法書士等の専門職が就くことが多くありました。
しかし、現在は後見等開始の申立ての時に、申立てをする人が後見人等の候補者を推薦することができるようになっています。そのため、家族の中で「後見人等をやりたい」という人が就任することが増えました。
したがって、急いで任意後見契約を結ぶ必要性は減ったのではないかと私は考えています。
ただ、長い年月の中では本人と後見人等の利害が対立することもあります。
例えば子が誰かの相続人になったときです。
こうした場合には、臨時の後見人等を選任してもらうように家庭裁判所に申立てる必要があります。
将来に備えて、見守り契約を締結するという選択肢
親なき後の問題に法定後見制度の利用を選択肢にする場合、将来の後見人等の候補者と本人とのつながりを築いておく必要があります。
そのため候補者が弁護士や行政書士等の専門職の場合には、「見守り契約」を締結しておくという手段もあること念頭に置いておいてください。
任意後見契約とは
将来、判断能力が衰えたときに、本人に代わって財産管理や契約等を行う任意後見人になってもらうように、本人と任意後見人候補者が契約をしておきます。
任意後見人には、原則として誰が就任してもよく、後見人の役割や報酬も契約によって決めることができます。
実際に任意後見人として活動できるのは、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後になります。
任意後見契約書は、公証人に作成してもらいます。
詳しくは以下のWebサイトを御覧ください。
厚生労働省 : 成年後見はやわかり
法務省 : 成年後見制度・成年後見登記制度
日本公証人連合会 : 任意後見契約