以前住んでいた所での話。
御近所に、時どき世間話をしていた高齢者がおられました。
毎日のように庭の手入れをなされていて、車も運転していました。世間話をするときも、ハキハキとお話しする元気な方でした。
御夫婦だけの世帯でした。お子さんはいたようですが、別の家に住んでいるようで、私はお会いしたことがありません。
ある日、いつものように立ち話をしていて、気になったことがありました。
同じ話を繰り返すのです。数分前にした私への質問を、まるで初めてするかのように、また尋ねるのです。
この時は、気にはなったけれど「お年寄りによくあること」と、流しておりました。
数日後、また立ち話をしました。
やはり同じ話、同じ質問を繰り返します。30分くらいは話をしていたと思うのですが、その中で4~5回は同じことを繰り返すのです。
私は行政書士会で受けた認知症に関する研修や、認知症サポーターになるための講習を思い出しました。
お年寄りによくある「物忘れ」と、認知症の「物忘れ」の違いについての話です。
簡単に言うと、次のような違いがあるそうです。
お年寄りの普通の物忘れは、例えば「一昨日のお昼ごはんを食べたことは覚えているけれど、何を食べたかを思い出せない」というもの。
一方、認知症の方の忘れ方は、「さっき食事をしたこと自体を忘れる」という違いがあるのだそうです。(食事の後に「ご飯はまだ?」と聞くような感じ)
私の御近所さんの場合、私に質問したこと自体をすっかり忘れておられるので、もしかしたら認知症ではないかと思いました。
ただ、私はこの方の配偶者とは面識がございません。
ですから「あなたの配偶者は、少し物忘れがひどいようだけど病院には行ってますか?」と聞くことは、気が引けたのです。
でもあまりにも気になったので、地域包括支援センターに電話をかけ相談してみました。
ただ、地域包括支援センターとしては、「イベントなどに参加されたことがある方ならこちらから何らかの方法で接触することは可能だけれど、一度も関りを持ったことのない方の場合は積極的には働きかけにくい」のだそうです。
その後は私も所用に紛れ、その方とお話をすることもなくなり、そのまま引っ越したため、御近所さんがその後どうなされたか存じ上げません。
今、当時を振り返って思うこと。
御高齢の御夫婦だけの世帯の場合、
お二人が元気なうちに、地域包括支援センターなどの高齢者を支援する専門職との関りを定期的に持っておいたほうが良い
と思います。
もしかすると、お子さんが同居されていたとしても、忙しくて顔を合わせる時間がすくない時もそうした方が良いかもしれません。
関わり方としては、地域包括支援センターなどが関わるイベントに参加するだけでも良いと思います。
その折に、職員とお話しできればもっと良い。
もし、「地域包括支援センターのような高齢者専門の機関との関りは遠慮したい」という場合。
御夫婦共通のお知り合いと、定期的に茶飲み話とかをするだけでも良いでしょう。
新型コロナ禍にあって、外出や茶飲み話や、イベントへの参加が難しい状況ではあります。
それに加えて冬場はもっと外に出にくいことでしょう。
そんな時、電話でもいいから、定期的に話をした方が良い。
認知能力の衰えを早めにキャッチできたなら、御本人の意向も踏まえた支援計画が可能になるかもしれないからです。
以上をまとめると、次の3つの方法をまとめてみます。
- 元気なうちに地域包括支援センターとの関りをもつこと。
- 御夫婦共通のお知り合いと、茶飲み話をする機会を大切にすること。
- 外出がしにくい時でも、電話などで話をする機会をもつようにすること。
私は、これらを実践することも、終活の1つだと考えています。
※この記事のイラストは、すべて「いらすとや」さんのものを使用しています。