東日本大震災関連の判決から②

今日で大阪北部地震が起きた日から1年が経つのですね。犠牲になられた方のご冥福をお祈りいたします。

さて、今日、Twitterを見ていたら「災害時に保護者が子供を引取りに行けなかったらどうなるのか?」という話題がありました。

この話題を見たときに、私の脳裏に真っ先に浮かんだのが、日和幼稚園と野蒜小学校に関わる判決です。特に野蒜小学校の件は、保育所・幼稚園・学校等の子供を預かる施設(以下、「子供を預かる施設」と記します)関係者にとっては大切な教訓が含まれていると思います。

野蒜小学校の件を、簡単に紹介します。(以下、亡くなられたお子さんを、Aさんと記します)

震災の日、Aさんは一度下校し習い事に行きましたが、地震の後、小学校に友達と共に避難してきました。その当時、教職員は避難してきた住民への対応と、学校に子供を迎えに来た保護者への対応に追われていたようです。そんな中で、Aさんの担任の先生は、Aさんの友人の父Bさんから「Aさんを自宅まで送り届ける」という申し出を受けました。担任の先生は、AさんをBさんに託し帰宅させました。Aさんは自宅にいた高校生の従兄に引き渡されましたが、その後、津波に襲われたという事件です。

ちなみにこの小学校も津波の被害にあい、避難してきた住民も何名か亡くなられています。

判決は、被告(野蒜小学校のある東松島市)の賠償責任を認めるもので、控訴審でも同様です。

この判決から私が読み取った教訓は、次の通りです。

①子供を預かる施設は、子供を保護者に安全に引き渡すまで、責任をもって保護する義務を負う。

②子供を預かる施設は、常日頃、その子供の通学区域(学区・送迎バスの経路)について、ハザードマップ等を確認しリスク想定をしていなければならない。

防災に対する意識が高まっている昨今、恐らくすべての子供を預かる施設で「防災計画」とか「緊急時対応マニュアル」のようなものを作成し、それに応じた訓練もしていることと思います(学校保健安全法第26条~第30条、保育所保育指針第3章4参照)。その中で毎年度当初、保護者は、災害発生時に集団下校をするか、保護者等への引渡しにするかの取り決めと、引渡しの際は「誰に引き渡すのか」を引渡し名簿のようなものに記入し、子供を預かる施設に提出していることと思います。

ですから、①は平時の冷静な時であれば「当たり前」のことに思われます。でも実際に大きな災害に襲われた直後の混乱と興奮に満ちた空間の中で、この義務を全うすることは容易ではないと思います。加えて、職員にも私生活があり、家族や家のことが気になる状況下で、目の前に不安で落ち着かない子供が何人もいたら、「先生、私がこの子を家まで送ってあげる」という申し出は、とてもありがたく感じるのではないでしょうか?

それでも、子供を預かる施設の職員は、断固として、マニュアルにしたがって、引渡し名簿に記載されている保護者またはその代理人以外に子供を預けてはならないのです。

なぜならば、保護者には「マニュアル通りに子供は守られている」という期待があり、また「マニュアル通りの場所に迎えに行けば、子供に会える」と予想し行動しているはずだからです。

集団下校を行う場合にも注意が必要です。なぜなら、大切なことは「子供を安全に保護者に引き渡す」ことだからです。

集団下校の際、地域代表の大人と施設側の地域担当職員が、目的の場所まで子供を引率することになります。問題は、施設から目的の場所までの安全と、その目的の場所から保護者に引き渡すまでの安全の、2点の確保にあります。結局のところ、すべての子供を保護者に引き渡すまで、引率者は子供から目を離すことができません。例え家に送り届けたとしても、そこに子供の安全を確保できる判断と行動ができる大人がいなければ、そこに留まるか、安全な場所に子供を連れてそこで保護を続けるかのどちらかしか選択の余地はありません。

つまり、どのような方法であれ、子供を安全に保護者に引き渡すことができなければ、義務を果たしたことにはならないのです。その義務を完全に果たすまで、職員は子供を保護し続けるのです。

先にも触れたように、職員にも家族や家があります。今後は、この義務の履行と職員の生活のバランスをどのようにとるのか、という問題に取り組んでいく必要がありそうです。(そのためのリスクマネジメントでもあります)

ちなみに、②のリスク想定についてです。例えば大きな地震の直後に停電が起き、激しい雨が降り出した中、保護者が子供を迎えに来て、土砂災害警戒区域付近にある(あるいはそこを通って)家に帰ろうとしたとき、あなたが施設の職員ならどう対応しますか?

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