40歳から50歳台になると、自分の親の車の運転について気になる方も増えてくるかと思います。
最近の報道によれば、免許返納をする高齢者が増えたそうですが、一方で、交通事情などの都合により運転せざるを得ない方もいるのは事実です。
動体視力が衰えや視野が狭まり、5感に対する反応・判断も遅くなり、運動能力も衰える。同時に複数の処理をこなす(世間話をしながら運転をするなど)ことが難しい。
そうした高齢者の特徴のうち1つでも、親の行動に兆候が見られるようになったら子供としては心配になるのも当然でしょう。
私も周囲に高齢ドライバーがおり、どのようにすれば良いのか考えることが増えました。そこで読んでみたのが、この本です。
「高齢ドライバー」(所正文、小長谷陽子、伊藤安海 著 文春新書)
3人の著者は、それぞれ交通心理学、認知症専門医、交通科学を専門にされている研究者だそうです。その知見をもとに高齢者と運転について書かれたのが、この本です。
この本を読んで、私が感じたこと考えたことを以下に記してみます。
何よりもまず、高齢者が運転をしなくても良い環境や条件を整えることが大切なんだということです。
- 重要施設が集積している街づくり
- 高齢者も安心して歩ける歩道のある道路
- 公共交通機関の充実
- タクシー定期券
のようなインフラや仕組みづくりももちろんですが、
- 歩行者を優先する運転マナー(イギリスのGive Way(相手に道を譲る)の精神・・・上記の本のP.108)
- 気楽に車に同乗させてもらえる人間関係
- バスの待ち時間を楽しめるゆとり空間や気持ち
- 徒歩圏内で満喫できる趣味・娯楽・仲間
といった、ソフト面も重要です。
子どもから「そろそろ運転を止めたら?」ということも場合によっては必要だけど、運転しなくてもよい環境や条件を一緒に考え、確かめてみることも必要なのかもな、と思いました。
その上で、どうしても運転が避けられないならば、上記の本のp.34で指摘している次の3つの運転行動を徹底する。
- 運転を昼間限定にする。
- 居住市町村内と隣接市町村内に運転エリアを限定する。
- 1週間の走行距離を100㎞程度以内にし、1日の距離もできるだけ少なくする。
さらに、急発進防止装置などの安全装置の行き届いた自動車を運転するように心がけるべきでしょう。
急発進防止装置は後付けできる物もあるようです。例えば、オートバックスのこちら。私は使用したことがないので、性能についてはお店で聞いてください。
https://www.autobacs.com/static_html/spg/pedal_mihariban/top.html
なお、75歳以上で運転免許の更新時、または一定の違反行為をした時に「臨時認知機能検査」を受けます。ここで「認知症のおそれ」の判定があると「臨時適性検査」か「医師の診断」を受けなければなりません。その結果、認知症と診断された場合は、運転免許の停止または取り消しになります。
こうした高齢者の運転免許制度については、以下のJAFのサイトが分かりやすいかと思います。
http://qa.jaf.or.jp/accident/license/03.htm
「高齢ドライバー」という本を読んで、「日本という国は、いろんな意味で車優先社会であり、各自が車を所有することを半ば前提として街づくりをしてきた国なんだな」とも思いました。
信号が青のうちに渡り切れないほど広い車道が必要なのは、その1つの証でしょう。
高齢社会となり、人口が減少していくこの先。社会や経済の在り方も含め考え直していかなければならない時期かもしれません。
私も50代半ば。20年後までには自分で運転しなくても良い仕事や生活の仕方を作り上げなくてはなあ、ということも、この本を読んでの感想です。