最近、NHKの様々な番組で「マンションの2つの老い」についての特集が報道されています。例えば、NHKスペシャルでは「老いる日本の住まい」というシリーズの2回目で取り上げられました。
※YouTubeで見られるダイジェスト版はこちらから
ちなみに、マンションの2つの老いとは、
- マンション建物の老い → 大規模修繕・建替えの問題
- 区分所有者・居住者の老い → 相続などに関わる問題
のことです。
私としては、「区分所有者・居住者の老い」が私の仕事にも関わる事なので大変な関心を持っています。
この「居住者・居住者の老い」は、もう1つの「マンション建物の老い」にも密接に関わることなので、マンション管理組合も真剣に取り組む必要のあるテーマだと思います。
この番組に関連したことですが、国土交通省は今年の8月10日に「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」のとりまとめを公表しております。
そのとりまとめ概要にも、マンションの2つの老いに関わる問題が取り上げられ、その中で「所有者の老い」に関わる課題として、区分所有者の所在が分からない事が指摘されています。
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マンションの区分所有者の所在が分からないと、どうなる?
この問題点について分かりやすくまとめたものが、先に挙げたNHKの各番組です。
所有者の所在がわからないことの主な問題点を次に挙げてみます。
- 管理組合の総会の定数や決議に影響する。
- 管理費や修繕積立金等の、建物の維持・管理に必要な資金を徴収できなくなる。
- 空き室になり、内部の管理が行き届かなくなる。
- 空き室内の荷物が放置されることにより、部屋内の老朽化が進む。
以上の問題点により、マンションの資産価値の低下ということも指摘されていました。また、不足する管理費や修繕積立金等の費用を、他の所有者が負担することにもつながります。
つまり、「区分所有者の所在が分からない」という問題は、その住居だけの問題にとどまらず、マンション全体に重大な影響を与えかねないのです。
なぜ、区分所有者の所在が分からなくなるのか?
区分所有者の所在がわからなくなる原因は、いろいろあるとは思いますが、現在の社会問題化しているのは
区分所有者・居住者の高齢化
です。
ただ、注意してください。
高齢者が問題なのではなく、
所有者・居住者の高齢化に対応できていない事が問題なのです。
所有者・居住者の高齢化によって、どのような事態が起きるのか?
まず、高齢者は体調の急変や、体力・身体能力の衰えからケガをしやすくなります。そのため、急に倒れたり、ケガをして動けなくなることもあります。
また、認知症になる可能性もあります。認知症のために、「自分が、今、どこにいるのか」が分からなくなることがあります。「自分の住居番号」や暗証番号を思い出せなくなるかもしれません。
体調の急変や介護が必要になったため、入院したり施設に入ることもあるでしょう。もし、その方が1人暮らしだったとして、入院・入所したことを他のマンション住民や管理組合が知らなかったら・・・?
また、亡くなることだってあります。そうすると、相続人が相続手続をする必要があります。
でも、誰が相続人か分からなかったら?相続人が相続放棄をしたり、相続手続が面倒だからと放置したら?
こうした事態が「所有者不明」の事態につながるのです。
逆に言えば、
所有者・居住者ご自身や、マンション管理組合が
所有者・居住者の高齢化に、きちんと向き合って、何らかの対策をとれば、
所有者の所在が不明になるリスクは、かなり減るはずです!
どのような対応が考えられるのか?
国土交通省は、この先、標準管理規約の見直しや、何らかのガイドラインを示す方針のようです。
ですが、所有者・居住者の高齢化は、それを待ってはくれません。
現時点で、やれることを、できるだけ早く準備すべきです。
私からの提案は、次の3つです。
① 高齢者の見守り。
② 任意後見契約・死後事務委任契約と遺言。
③ 住民の理解と協力
詳しくは、当事務所までお問い合わせください。
メール : gyo.sawa55@outlook.jp
少しだけ付け加えるならば、高齢者だけでなく、小さな子供、妊婦、障がい者が住みやすい所ならば、誰にでも住みやすい所であり、その結果、資産価値も保たれると思いますよ。