
認知症の家族がいる方の心配事の1つに、徘徊があると思います。
令和4年以降、毎年、全国で1万8千人以上の認知症の人が行方不明になっているそうです。これは1日当たりの平均で約50人が行方不明になっている計算です。
もっとも、令和6年の場合は約7割の人は警察に行方不明届を提出したその日に発見されていて、1週間以内だと9割程度の人が見つかっています。
※令和6年における行方不明者届受理等の状況(警察庁生活安全局人身安全・少年課) 令和7年6月より
認知症の方の外出への対応は、いろいろな方法が提案※されていますが、ここではGPSと行方不明になった場合への準備について紹介いたします。
現在、自治体によっては下に紹介するサービスや機器の購入費用を助成する制度があるところもあります。一度、お住いの自治体の高齢者担当の課あるいは地域包括支援センターに問い合わせてみてください。
GPS以外の対応の主なもの
- 玄関等にドアの開閉を感知するセンサー、鈴などをつける。
- デイサービスを利用する。
- 趣味のサークル等の、ご本人が好む居場所を作る。
- 日中、適度に運動をする。
- 生活習慣を整える。
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GPS
認知症の方にGPSを持ち歩いてもらうのは、有効な方法だと言われています。
認知症の方の行動を過度に制限することなく、おおよその居場所を確認できるからです。
ただ外出する時には常にGPSを持参するように習慣づけておく必要があります。そのために、次のような方法が提案されています。
- お守り袋に入れる。
- 靴に取り付ける。
- ブレスレットや腕時計型のGPSを利用
- キーホルダー型のGPSの利用
- スマートフォンのGPSの利用
どの方法にしても一長一短があり、ご本人の好み等に合わせて選択するしかありません。
また、以下のような点にも注意が必要です。
- バッテリーの持続時間や充電・交換方法
- GPSの精度
家族の方はスマートフォンなどで居場所を確認できるようにしておきます。
もしも、外出した認知症の方が家に戻らなかったら
考えられる限りの対策をしたけれど、外出したまま家に戻ってこなかったら...。
自治体が提供するサービスを利用する
行方がわからなくなった認知症の方を探す支援を行っている自治体もあります。
例えば、私が住む仙台市では「見守りネットワーク事業」を行っています。これは御家族等から居場所を探してほしいという依頼があった場合に、あらかじめ登録している協力者に行方不明の方の情報を一斉にメールを送信し、早期発見につなげる取組みです。
隣の富谷市では「みまもりシール」を交付し、衣服や持ち物に貼ってもらい発見者とのやりとりが可能になります。
認知症の家族がいて心配な方は、早めに自治体に相談した方が良いでしょう。
チラシを作る
行方が分からなくなった場所の近隣を探す時、チラシを何枚か準備した方が良いかもしれません。
当事務所では、見守り契約をしたお客様と相談の上、あらかじめ次のような様式のチラシを作っておくことにしました。
写真等を貼る欄について
〇写真の他に、イラストも良いかと思います。
〇できるだけ最新のものを貼りましょう。
〇顔のアップ、全身、身体の特徴がわかるところなど、何枚かの写真等を貼ると良いと思います。
〇写真の場合は、撮影した年月日等の情報も添えると良いかもしれません。
★日頃から様々な写真を撮っておくと、良いですよ!
服装について
〇行方不明時に身に着けていた服・帽子・靴等がわかればそれを書きます。
〇行方不明時に身に着けていたものが分からない場合には、普段、良く着ていた服などを書くと良いと思います。
その他について
〇過去に手術をしていたなら、その手術の跡など身体の特徴を記しましょう。歯に特徴等があれば、それも記すと良いかもしれません。
大切な事
認知症の方に限らず、知的障がい者、精神障がい者、その他の障がい者もそうですが、地域の中で暮らすという事は地域の方々の協力が大切なんだと思います。
そのためには顔と名前と住まい(あるいは連絡先)を知っていてもらう事。
地域で買い物をする。町内会の防災訓練や清掃作業などに参加する。そうして知り合いを少しずつ増やしていけば、いざという時に協力してくれる人が現れるのではないかと思います。
地域の全員に知ってもらう必要はないでしょう。町内会等の役員さんや、良く行く理美容店やスーパーなど。まずはポイントになる人から。
これはマンションでも同じかなと思います。というより、もしかするとマンションに住んでいる方ほど他の住民との関係が大切になるのではないでしょうか?
なぜなら、玄関のドアはどこも同じで間違いやすい上に、エントランスのオートロックが認知症の方が無事に家に帰る際のハードルになる可能性があるからです。
認知症の方を家族だけで支えるのは無理があります。
家族の役割で大切な事は、1人でも多く協力してくれる人を見つけておくこと。それは認知症の方が外出したまま帰ってこない場合にも助けになるはず。私はそう思います。