特殊詐欺事件のニュースを目にしない日って、週に何日くらいあるのでしょう?
実際、私が住む宮城県では特殊詐欺が増加しているようで、昨年は令和に入ってから事件の件数・被害総額とも最も多くなりました。
県内の特殊詐欺対策 – 宮城県公式ウェブサイト (pref.miyagi.jp)
つい先日は、「老人ホームに入る権利が当たった」という電話に始まる特殊詐欺で、8500万円もの被害に遭った方の報道もありました。
「老人ホームの権利が当たった」 宮城で特殊詐欺、8500万円被害:朝日新聞デジタル (asahi.com)
未だ被害に遭ったことのない私たちは、「こんなに『特殊詐欺にあわない方法』などが紹介されているのに、なんでお金を支払った?」という疑問を、持ってしまいます。
でも、被害に遭った人たちの多くは、特殊詐欺の手口を知らなかったわけではないようです。
宮城県内の特殊詐欺被害者「手口知っていた」増加|NHK 宮城のニュース
被害者の半分は、「特殊詐欺の手口を知っていた」し、テレビや講演、広報誌で「特殊詐欺について話を聞いたり、注意を受けていた」のです。
つまり、特殊詐欺の手口を知っていたとしても、完全に防止することは難しいのです。
いつだったか「先日、もしかすると特殊詐欺だったんじゃないか?と思える電話があった。危なく騙されるところだった」という方の話も聞いたことがあります。「この人ですら騙されそうになったの?」とビックリするくらい、判断力などのある方の経験です。それほど、手口は巧妙で、被害に遭った方の落ち度を責めるのは筋違いなのです。
そうであるならば、「被害に遭わないこと」だけを考えてきた私たちの考え方を、少し修正する必要があるのではないでしょうか?
これまで通りの
特殊詐欺の被害に遭わないようにすること
に加えて
仮に特殊詐欺に引っかかったとしても、被害をできるだけ少なくする対策をすること
も非常に重要だと思うのです。
そのために
預貯金口座の利用方法の見直し
をしてはいかがだろう?と私は思うのです。
以下、私の現時点でのアイディアを紹介します。
ぜひ、このアイディアを叩き台にして御家族や支援者と相談をして「被害を少なくする」方法を考えてみてください。
Table of Contents
【案1】 キャッシュカードを減らす
一度、ご自身の預貯金の利用方法について考えてみてください。
キャッシュカードを使う時って、どういう時でしょう?
キャッシュカードが無いと困る事って、どんな事でしょう?
キャッシュカードのある口座は、いくつありますか?その口座の中で、キャッシュカードが無いと困る口座はどれでしょう?
上のようなことを検討してみて、もし「キャッシュカードが無くても困らない」預金口座があったら、思い切ってキャッシュカードを銀行に返却してはいかがでしょう?
あるいは、預貯金口座がいくつかあるならば、口座の利用目的を考えて、いっそのこと解約も検討してみてください。
※預金口座の整理は、将来の相続手続を簡単にするうえでも、終活の一環として検討してみてください。
【案1】の狙い
特殊詐欺の中にはキャッシュカードを騙し取ろうとする手口があります。そのキャッシュカード自体を減らすの狙いです。
キャッシュカードが無い口座は、窓口で手続きをする方法が考えられます。窓口手数料は高額になりますが、金融機関の職員が関わるので被害を防止するきっかけになり得ます。
次のような用途の口座から、キャッシュカードを無くすことが考えられます。
- 利用回数は少ないが、1回の利用で高額を振り込んだり引き出したりする可能性がある口座。
- 口座の残高が高額になるような口座。
- あるいは、自動引落・自動振替に利用する口座
逆に「キャッシュカードによる引出し回数が多い口座」からキャッシュカードを廃止すると不便です。こうした口座の場合は、あえて残高を少なく保つことで、仮に特殊詐欺にあった場合でも被害金額を抑えられます。
あるいはキャッシュカードを廃止した口座は、インターネットバンキングの利用も考えられます。
この場合には「信用できる人に操作を手伝ってもらう」ことが大切になるかもしれません。また、ウイルス感染等、特殊詐欺とは違う配慮も必要です。
あまり利用していない口座のキャッシュカードを盗まれたら・・・
これは私の想像でしかないのですが...。
利用していない口座のキャッシュカードが盗まれた場合、犯罪に関わるお金の送金先の口座として利用される可能性もあるのかなと思います。
ですから、残金もほとんどなく、利用もしていない口座のキャッシュカードだけが盗まれた場合でも、警察に被害届を出し、また、銀行にも連絡をすべきです。
また、こうした危険性を無くすためにも、不要な口座は解約した方が良いと思います。
【案1】の課題
近頃、各金融機関で支店等の統廃合を進めたり、窓口業務を減らす傾向が見受けられます。
特に地方では公共交通機関の状況も重なり、キャッシュカードを使って郵便局、農協やスーパー・コンビニ等のATMを利用する他に現金を引き出す手段がない所もあるかもしれません。
【案2】キャッシュカードの利用限度額を引き下げる
おそらく多くの銀行では、変更の手続をしないなら、キャッシュカードの1日の利用限度額が次のように設定されていると思われます。
●現金の引き出しは、1日で50万円まで。
●振込・振替は、1日で100万円まで。
この1日の利用限度額は変更できます。
ですから、
1日の引き出し限度額を50万円以下に、振込・振替の限度額を100万円以下に引き下げる
ことで、被害額を抑えることができるのではないかと考えました。
例えば、「もしかしたら騙されたのでは?」と気づいてから、警察や銀行に相談し、その口座を凍結するまでに、どのくらいの時間がかかるのか?ということを考えます。
1日の引き出し限度額が50万円の口座に100万円の残高があれば、騙された翌日には100万円全額が無くなります。
でも、1日の引き出し限度額を20万円に引き下げていれば、騙された翌日までの被害額は40万円。全額引き出すのはキャッシュカードを渡したその日を含めて5日間を要します。
もし犯人が引出しではなく振込送金の方法で口座からお金を騙し取る場合。
1日の引き出し限度額が100万円のままなら、その日のうちに口座から100万円のお金が消えます。
ですから、キャッシュカードの1日の利用限度額を引き下げることは非常に重要な防衛手段だと思います。
【案2】の課題
限度額を変えるには、銀行の本店や支店に行って手続をする必要があります。
また、ある程度、ご自身のキャッシュカードの利用状況を把握しておかないと、限度額の変更に困るかもしれません。
【案3】信託銀行の個人向けサービスを利用する
現在、各信託銀行では認知症対応のサービスを提供しています。
認知症対応と書きましたが、もちろん認知症ではない方も利用できます。
このサービスを利用することで、「うっかり高額のお金を引き出した」というような事態を防止することができると思います。
また、あらかじめ信託銀行に伝えている家族等が、御本人に代わってお金を受取ることも可能です。そのため、ご自身が銀行に行く代わりに家族がお金を受取り御本人に届けるということもできます。
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【案3】の課題
各信託銀行のサービスは、私には大変魅力的に見えますが、いくつかの課題もあります。
信託銀行ごとに提供されるサービス等が変わります。口座への最低預金額や手数料も異なります。
ですから、契約前に十分に検討する必要があります。
一方、信託銀行の店舗が非常に少ないのも大きな課題だと思います。
また、家族が御本人に代わってお金を受取れるサービスは便利な反面、そのお金の利用方法等に注意をしないと相続発生時にトラブルになる可能性もあるので、この点での防止策も必要があるでしょう。
その他、上記を組み合わせたり、他の手段を講じたり・・・
上の3つの手段を組み合わせてみるのも有効かと思います。
これらがヒントになって、他の手段を思いつかれるかもしれません。
他の手段としては、例えば「家族や支援者と財産管理委任契約を結び、キャッシュカードは契約を結んだ家族に預け、通帳は本人あるいは別の家族が所持する」ことも考えられるかと思います。
この方法の場合、生活費等に必要な現金を家族から引き出してもらい手元に届けてもらいます。時折、御本人や他の家族が通帳に記帳して適切に引き出されているかどうかを確認するのです。
ただこの場合も、キャッシュカードを預かる家族が相続時に難しい立場に立たされる懸念もあるので、それへの配慮が欠かせません。
いずれの方法にしても効果が期待できる所と、課題との両面があることは確かです。
大切なことは、「預貯金口座の利用方法」も含めた御家族や支援者等との話し合いです。
もしかするとそれが、最も重要な特殊詐欺被害防止策につながるかもしれません。