私の母も80歳を超え、大分、老いを感じるようになりました。話しかけても反応がなかったり、歩くスピードもずいぶん遅くなりました。
でも、私の言っていることが理解できないのではなく、恐らくは聞こえづらかったり、考えたり思い出したり判断したりするのに少し時間がかかるだけだったりします(その証拠に、私が母の反応を待つのを諦めたころに、ゆっくり話しだしたりします)。自分の考えを持っており、口出しされると無言で拒絶したり、時には反抗もしたりします。
少し前に「『年を取ったな』と実感する時」というタイトルで、何かのきっかけがなければ自分の年齢について考えることはない、という旨の投稿をしました。
母くらいの年齢になれば、さすがに自分の年についての自覚はあるでしょうけれど、「自分にできること」とか「自立への意思」のようなものは維持しているのではないでしょうか?
このことは御高齢の方と接する時にも心がけておきたいことだと私は思っており、それに関する本を2冊御紹介いたします。
- 「精神科医が教える 親のトリセツ」 保坂隆著(中公新書ラクレ)
- 「ユマニチュード入門」 イヴ・ジネスト,ロゼット・マレスコッティ著本田美和子訳(医学書院)
1冊目の「親のトリセツ」の著者、保坂隆先生は、聖路加国際病院で診療教育アドバイザーをなさっている精神科医です。その豊富な御経験から、高齢者の心理を踏まえた接し方について、様々なアドバイスをまとめたのがこの本です。
内容としては運転免許証の返納にかかわることや、家の片づけ、相続など、高齢になった親に関する様々な心配事に対し、どう関わったらよいかが丁寧に書かれています。どのケースにしても、本人の意思の尊重が土台にあり、その本人の意思決定をどう支えていくかという視点が貫かれているように私は読みました。
2冊目の「ユマニチュード入門」は、認知症ケアの世界的な第一人者であるイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏が、その魔法とも言われるような技法の基礎を紹介した本です。テレビでも放送されたことがあるので、御存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この本には「ユマニチュードの4つの柱」として認知症の方への接し方、「心をつかむ5つのステップ」として認知症の方を訪問するところから退室するまでのおおまかなコミュニケーションの取り方について紹介されています。
4つの柱は認知症の方の体の支え方などの技術なので、多少の訓練が必要かと思いますが、5つのステップは完璧なものでなくてもマネをすることはできそうです。
何よりも、このユマニチュードで「認知症の方の人権」ということを私は考えさせられました。
超高齢化社会の日本。実行できるできないにかかわらず、多くの人とこれらの本で紹介されている知識を共有出来たらいいなと思います。