災害時の経営者の判断

雨ですね。九州の北部と岩手県沿岸部、宮城県気仙沼市のみなさんの安全をお祈りします。

さて、今朝の佐賀県・長崎県に関わるニュースを見ていて気になったのが、駐車場の車がタイヤの半分くらいまで水に浸かっているのに発進し、膝あたりまで冠水している歩道を歩いている人が何人もいたこと。

夜間勤務でこれから帰宅するとか、医療や介護関係者でどうしても出勤しなければならないとか、様々な事情があり、やむを得ず出かけたのかもしれません。

でも、原則としては道路が冠水していたら、「その場に待機すると命の危険にさらされ」る上に「2階以上に避難する」などの垂直避難が不可能であるという危機的状況を除いて、屋外に出てはならないと思います。

自宅にいるなら登校・出勤はしない。職場にいるなら、無理に帰宅せずにそのまま待機。命を守る以上に大切なことはありません。

ところで、こういう時に経営者(あるいは労働基準法で定める使用者。以下、まとめて経営者等。)は、いつ、どのような判断をして、従業員等に指示しているのでしょうか?

というのも、責任感の強い人は

  • 今日、大切な商談がある
  • いそいで仕上げなければならない仕事がある

など、色々な理由で無理をしてでも出勤しようとしがちです。

だから経営者等は、そうした人たちも安心して避難行動を優先できるように、きちんと指示すべきなのです。

そもそも経営者等には、次の3つの安全配慮義務があります。

  • 労働契約を結んだ労働者が、その生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする(労働契約法第5条)
  • 派遣労働者に対する、同様の不法行為法上の安全配慮義務(東日本大震災・七十七銀行女川支店事件原審(仙台地判平26・2・25))
  • 下請人の労働者に対する安全配慮義務(三菱重工造船所事件(最判平3・4・11))

その他、社屋・工場内にいる取引先や顧客の安全配慮、敷地に隣接している方々への影響への配慮(汚染物質を漏出させない等)もあります。

この義務の履行のためにも、災害発生時や発生が予想されるときの経営者等の判断と指示は重要になります。

従業員を雇っている事業所の多くは、防災計画やBCPを策定済みだと思いますが、次のいずれかに当てはまる場合は、今日のような大雨や台風時の対応も考えておくべきでしょう。

  • 地震を想定した防災計画やBCPしかない。
  • 緊急時の対応マニュアルはあるが、大雨や台風のようにあらかじめ災害発生が予想される場合の、判断時期や対応内容が決められていない。
  • そもそも防災計画やBCPを作っていない。

大雨や台風などのように、災害発生まで間がある場合の対応について

少なくとも、次の事柄についてはあらかじめ決めて、社内規定として文書化し、正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員・下請等にも知らせておいた方が良いでしょう。

  1. 何を決定するのか(臨時休業(1日、半日)、自宅待機・自宅勤務、事業所内待機、事業の再開について、その他)
  2. 経営者等の内、誰が決定するのか(社長?専務?その人たちがいなかったら?)
  3. いつ決定するのか(気象庁から注意報・警報が発令されたら?市町村から避難勧告が出されたら?その他の基準?)
  4. 決定を、誰が誰にどのように連絡するのか
  5. その他(事業再開時の安全点検について等のBCPに相当する内容や、時間的にゆとりがある場合の機械設備の保全など)

なお、現に台風が来た時のように、天災により臨時休業した場合には休業手当を支払う義務はありません(支払っても良いのですが・・・)(労働基準法第26条)。事業所内で待機させる場合は、原則としては賃金支払い義務は生じないと思われますが、待機時間中に何らかの仕事を命じた場合には賃金・残業代を支払う必要が生じるかもしれません。

ただ、予防的に休業した場合の補償については、私にはよくわからないので社会保険労務士に御相談ください。

参考:「今までなかった!中小企業の防災マニュアル」 本田茂樹編著  労働調査会発行

なお、上記の3の決定するタイミングですが、経営者等の立場から言えば、天候の状況をギリギリまで見極めて判断したいところだと思います。一方で、労働者側の立場から言えば、家族のこともあるので、できるだけ早めに決めてほしいところでしょう。

最近は、人手不足で困っている企業が多いと聞きます。そうであるならば、今働いている従業員の満足度を上げることも大切でしょう。そういう視点も災害発生時や発生が予想される時の判断基準にしてはいかがでしょうか。

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