昨日から「台風19号のような状況の時、どのタイミングで避難所に移動するか」ということを考えています。もう少し踏み込めば「地域住民同士で避難を呼びかけあう時に、どのようにすればよいか」という地区防災計画に関わることです。
おそらく多くの地区(町内会やマンション等の地域住民のまとまり)で、防災計画を立てて、それに基づいて避難訓練や、避難所運営にあたっていることと思います。
その中で、例えば今回の台風のような場合に「どのタイミングで避難行動を開始するのか」ということは、とても大切な計画事項だと思います。
というのも、高齢者や障がい者、小さな子供もいる妊婦さんなどの避難する際に援助の必要な方に、いつ、誰が声をかけ、実際の避難を支援するかというのは、その本人はもちろん、支援者の命に係わるからです。
大きな災害に見舞われた丸森町の阿武隈川と大郷町の吉田川について、国土交通省の「川の防災情報」というサイトから時間雨量と川の水位のデータをとって、当時の状況を想像してみました。(下のグラフや添付したファイルは、「川の防災情報」のデータを、私のために整理・加工したものです)
- 青の縦棒 ・・・1時間の降水量
- オレンジの折れ線・・・川の水位
- 緑の横線 ・・・水防団待機水位
- 黄色の横線 ・・・氾濫注意水位
- ベージュの横線 ・・・避難判断水位
- 赤の横線 ・・・氾濫危険水位
このグラフを見て、私は「早めに避難する判断は難しかったかもしれない」と感じました。
というのも、まず川の増水で指摘されていることですが「雨の降り方が落ち着いた後も、川の増水は続く」ということです。また「いったん増水し始めると、水位の上昇スピードが速くなる」という傾向も見られます。これは、上流や支流、用水路等から流れてくる水が徐々に下流で合流し流れてくることによるそうです。
つまり、川に近い地域の方にとっては「雨の降り方が弱くなったから安心」といことにはならないのです。
このことは、長く川のそばに住んでいらっしゃる方にとっては既知のことでしょうけれども、敢えて強調いたします。
さらに、丸森町では難しい状況にあったと思います。
記録によると丸森町が町内全域に避難準備情報を発令したのは午後2時頃です。避難勧告も午後3時20分ごろです。
これは本格的に雨が降り始めて3~4時間経過頃のことだと思いますが、その頃はまだ阿武隈川の水位データはそれほどの増加は見られません。だから、もしかすると「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」と思ってしまうかもしれない状況だったのではないでしょうか。
報道などによると道路が冠水したりし始めるのは午後6時あたりだったかもしれません。そのころ既に周囲は暗く、雨脚はかなり強くなってきています。阿武隈川は水位も上がってはきてはいるもののまだ水防団待機水位には至っていない。この時点での避難所への移動の判断は、既に非常に難しい局面になっていると思います。私なら自宅が2階建てなら2階への垂直避難を選択するタイミングです。
安全に避難するには、やはり避難準備情報の段階で移動し始めるのが良かったのでしょう。
今回も、亡くなられた方の多くが御高齢のようですが、高齢者に関しては「周囲への気兼ね」と「家への愛着」、「身体機能・認知機能の衰えからくる判断の遅れ」の3点が、避難行動に影響を与えかねません。
ゆっくり動くために周りに迷惑をかけるとか、避難所で周囲の人に気を遣わせるのではないかとか、逆に気を遣うのがいやだとか。長年住み慣れた家を離れたくない気持ちもあるかもしれません。
同居している家族がいれば一緒に逃げることもできるでしょうけれど、1人あるいは高齢者夫婦のみの世帯だと家に残りたい気持ちが勝ってしまう可能性もあります。
こういう時に、地域の人は、どのように高齢者を避難誘導したらよいのでしょうか?
それが昨日から私が考えていることでした。
そして多くの防災関係者や研究者が、長年考えて呼び掛けていることでもあると思います。
1つの試案として次のような展開を思いつきました。呼びかけに応じて行動を開始してくれれば良いのですが、そうじゃない時には呼びかけ人は呼びかけだけして、すぐにそこを去った方が良いと思います。
段階 | 呼びかけ人 | 呼びかけ内容 |
台風通過が濃厚になった段階 | 地区の担当者A | 避難準備情報が出たら声をかけに来るから、逃げる準備しておいて |
雨の降り始め・風の吹き始め | 隣の人又は家族 |
そろそろ逃げる準備しよう ※電話等の方法による |
避難準備情報 | 地区の担当者B | みんな移動し始めたから一緒に行こう |
担当者Bが去った後に、避難勧告が出る前 | 地区の担当者C | みんな待っているから迎えに来た |
私は、呼びかけ人は、それぞれの段階で違う人物が行う方が良いと思います(高齢者にもよるかもしれませんが)。
上記のような呼びかけをやったことがないし取り組んでいる地域も知らないので、効果はわかりません。でも、試してみる分にはいいかなと思い書きました呼びかけ人を務める人材が足りない地域もあると思います。地区の役職員だけでなく、隣近所や中学生、遠方の家族からの電話など様々な工夫でやってみてはいかがでしょうか。
また、避難した後は、玄関先などに外から見えるように「避難しました」というサインを残した方が良いでしょう。
これは、私の住んでいる地区で実際にやっていることです。あらかじめ地区毎にどういう避難したサインを取り決めておけば、地区の担当者が各訪問先を巡回する時に役立つはずです。災害時に避難した後の家に窃盗が入る心配もありますが、命を守る行動を最優先にしてほしいものです。
以上、まだ行方不明の方もおり、緊急避難所で心細い思いをされている方も大勢いらっしゃる段階で、こうした投稿を載せることに躊躇も感じました。でも、被災していない方も関心を高く持っているこの時期に、投稿することの意義もあるかと思います。そうしたことも汲み取って読んでいただけたら幸いです。