どのような人が遺言を書いた方が良いの?

 終活のセミナー参加者の中には

「私は財産もないから、遺言なんて必要ない!」

と言う方がいらっしゃいます。

その効果が望まれる場合には、財産の多少に関わらず遺言を書き残した方が良いのです。

 以下に遺言書を作った方が良い代表的な例を4つ挙げますが、それ以外にも遺言書を残した方が良い場合があります。一度、専門家に相談してみてください。

 ただ、遺言書は万能ではありません。

 最後に、遺言書を作る時に気にかけて頂きたい点を記しますので、参考にしてください。

(注)ただし、遺留分の侵害や、相続人等が全て同意した場合など、遺言書の内容とは違う結果が生じることがあります。

1.将来の相続人(推定相続人)の中に、次のような方がいる場合

「自分の遺産は遺族で自由に決めて構わない」とお考えの方でも、将来の相続人に次のような方が含まれている場合には、遺言書を残すことを前向きに検討された方が良いと思います。

① 認知症や知的障がいのある方などが推定相続人

 認知症や知的障がいのため、「判断能力」に課題があると考えられる方(以下、「認知症の方等」と記します。)が相続人の場合、相続人だけで遺産分割協議を進めることはできないと、考えた方が良いです。

 ※遺言書が無い場合には、成年後見人等を付けた上で、成年後見人等を交えて遺産分割協議をすることになります。

<注意事項>

 遺産の中の不動産を認知症の方等に相続させることを遺言書に書いた場合には、遺産分割協議を経ることなく相続手続はできますが、相続登記を司法書士に委任する時点で成年後見人等を付ける必要が生じます。

② 推定相続人の中に、遠方に住んでいる方がいる

 例え、日本国内であっても遠方に住んでいる方と遺産分割協議のやり取り(特に書類のやり取り)をするのは、手間と費用がかかります。外国に住んでいる場合には、国内の方とのやりとりとは更に違う手間がかかります。

③ 再婚しており、前の配偶者との間に子がいる

 前の配偶者との間の子も相続人になります。ですから、この子に遺産をあげる・あげたくないの希望に関わらず、相続手続の煩雑さを軽減するには遺言を残した方が良いです。

 再婚以外でも、認知した子や、認知していないけれども以前付き合っていた人との間に子がいる場合にも遺言を考えた方が良いです。

④ 法律上の婚姻をしていない配偶者がいる

 法定相続人に該当するのは、法律上の婚姻をした配偶者です。

 婚姻届を出していない、あるいは法律婚が認められていない配偶者がいて、その方に遺産を残したいなら遺言を書く他に方法はありません。

※法定相続人に理解があり、事実婚の配偶者に遺産を渡した場合、贈与税がかかると思います。遺言書で遺産を遺贈した場合には相続税への配慮が必要です。詳しくは税理士に御相談ください。

 

2.特定の人や団体に遺産を受取って欲しい場合

 「〇〇には世話になったから、その分だけ他の相続人より多く遺産をあげたい」

 「△△に寄付をしたい」

という願いを実現するためには、遺言を書くのがベストです。

 また、「〇〇の世話をすることを条件に、▢▢を遺贈する」というような、遺産を譲る条件を付ける場合にも、遺言書が効力を発揮します。

3.推定相続人がいない場合

「子も孫もなく、親、兄弟は既に亡くなっている。甥姪とは面識がないから、遺産を渡すつもりもない」

というような方の場合、連絡先不明の甥姪の相続手続の手間を少なくするために、遺言書をぜひ残してください。

4.遺産の分割や処分の仕方に希望がある場合

「代々受け継いできた田畑は、〇〇に継いでもらいたい」

「今まで住んできた家は、私の他に住む者はいないから、売却してほしい」

このように、遺産の受け継ぎ方に希望がある場合も、遺言を残した方が良いです。

遺言書を作る時に気にかけて頂きたいこと

遺言書は、亡くなった方の意思の表れですから遺産の処分等には効力がありますし、手続も遺産分割協議書で対応するより楽になります。

でも、「遺言は絶対的なものではない」ということも心に留めて頂きたいところです。

以下、遺言に関わる留意点を3つ、簡単に示します。具体的には、専門家にぜひ、ご相談ください。

(1) 遺言執行者の指定

遺言書の内容を実現するために、ぜひ、遺言書の中で遺言執行者を指定してください。

遺言執行者になるために必要な資格は、ありません。ですから、専門職だけでなく、家族・知人でもかまいません。

ただし、遺言執行者には以下の責任・義務があることには注意が必要です。

  • 遺言の内容を相続人に知らせること。
  • 相続財産の目録を作成し、相続人に渡すこと。
  • 遺言に書かれてあること以外はできない。
  • 遺言の内容を実行し終わったら、任務の完了を報告し、保管しているもの等を相続人に引渡さなければならない。

なお、遺言に遺言執行者の報酬についての記述が無い場合には、遺言執行者は報酬を請求できない事にもご注意ください。

(2) 特別受益と持ち戻し

 特別受益というのは、生前に相続人に贈与した分や、遺言で特別に遺贈した分などです。

 後に記す遺留分の侵害額を計算する時に、この特別受益を相続財産に含めて計算します。このことを「持ち戻し」と言います。

 もし、「生前贈与の分は持ち戻しを免除する」と遺言書に書けば、持ち戻しなしで遺産を分割することができます。

 なお、配偶者については、遺言書に書かなくても「持ち戻しは免除されている」と推定して計算します。

(3) 遺留分

 子・孫、親、配偶者などの法定相続人には、民法で最低限の相続分が定められています。

 それを遺留分と言います。

 仮に遺言書で「全財産を配偶者に相続させる」と書いたとしても、子には法定相続分の2分の1の遺留分があるため、配偶者に遺留分を請求することができます。

 遺言書を書く際には、この「遺留分への手当」も考えておいた方が良いです。

※兄弟姉妹には遺留分はありません。

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