昨日の報道によると、台風15号による住宅被害で国の支援制度の対象から外れる一部損壊について、国土交通省は自治体向けの支援を拡充し、自治体が設ける修理費補助金の9割を特例的に負担すると発表したそうですね。
被災された千葉県の方は、少し安心されたかもしれません。
ただ、またまた私はいくつかの疑問を感じてしまいました。
ということで、まだ未整理なままですが思いついたままの疑問を列挙します。
1.そもそも一部損壊なのか?
今回の台風の被害状況は、テレビで見る限り風による被害(風災)が大きいように思います。
地震や洪水のように、建物が倒壊したり、壁が無くなったりすれば、私のような素人が一目見ただけでも「全壊」とか「大規模な修繕が必要だね」とある程度判断できます。
だから災害救助法や被災者生活再建支援法の適用条件である「住家滅失世帯数」の集計も、比較的早く済ませることができるのだと思います。
けれど、今回の場合は少し趣が異なります。
さすがに屋根全部が無くなっている場合は別として、屋根瓦が飛んでしまったケースです。
一見、屋根瓦が飛んだだけなので被害としては軽めに見られてしまうかもしれませんが、でも報道されている通り、そこから雨が吹き込んで住宅内部にまで被害が及んでいます。壁・天井・床その他が腐食したりカビが発生したりする可能性もあります。
これは、一部損壊なのでしょうか?
この点内閣府は、「一部損壊とみなされるケースでも、屋根が壊れて浸水した雨で住めなくなった場合は半壊としたり、屋根の大部分が壊れていれば全壊や大規模半壊と認定したりするなど弾力的に運用する。」と自治体に対して通知したようです。
だとすると、判定結果次第では被災者生活再建支援法が適用され、全壊または大規模半壊には支援金が支給される可能性が生じるのではないでしょうか?
この場合、国が9割補助するという一部損壊の数は、いったい何世帯になるのでしょうか?
2.特例でいいのか?
この一部損壊に対する国の補助は、台風15号の被害に対する特例として実施されるようです。しかも、現在のところは千葉県だけ。
何故でしょうか?
これまでの台風被害と今回の被害のどこに違いがあって、特例として実施する必要があるのでしょうか?しかも千葉県だけ。他の都道府県の同様の被災者はどうするのでしょうか?
温暖化は台風を強く大型化する影響をもっているそうですが、そうだとすると、今後、同様の被害は発生することがあるかもしれません。
そのたびに「特例」を設けるのでしょうか?恩恵的に?
むしろ、災害救助法や被災者生活再建支援法を見直す契機にするべきではないでしょうか?
3.自助・共助・公助の線引きを見直す必要は?
Wikipediaによると、被災者生活再建支援法は阪神・淡路大震災を教訓に制定された法律だそうです。
地震による被害は、前触れなく広範囲にしかも壊滅的な被害をもたらします。阪神淡路大震災より前の1964年の新潟地震を契機に作られた地震保険に加入していたとしても、火災保険でかけている保険金額の50%を上限とする補償なので、生活再建には不十分です。だから公助としての被災者生活再建支援制度は、損害をすべてカバーするわけではないにしても、被災者の助けになる制度ではあります。
だから制定後は、支援内容等が拡充されてきていますし、現行制度にも不足を感じ、今回の特例のように一部損壊も支援するように求める声もあるようです。
そうであるならば、この機会に住宅再建の自助と公助の線引きを整理し直すべきではないでしょうか?
国・自治体からの支援が厚くなるのは被災した場合にはとてもありがたいことですが、当然のことながら、その分の財源が必要です。歳出の見直しだけでその財源が捻出できる状況に、この国や自治体がなっているのでしょうか?
どこかで、公助の線を引き、自助や共助に委ねなければならない部分も出てくるはずです。
自助である(もしかしたら共助?)火災保険は、今回の台風のような風災も補償しています(あくまで、そのように契約していればの話ですが)。
風災は、風による損害だけではなく、風によって壊れた個所から吹き込んだ雨などによる損害も補償します。今回の千葉県の被災者でも、この火災保険による保険金を受け取れる方が多くいらっしゃると思います。
どの災害にも言えることですが、被災者は気の毒です。一瞬で多くの物や大切な方を失う。どこにも希望を見出せなくなる。
だから力になりたい。早く住宅を再建し、生活を再スタートしてほしい。
でもだからと言って、どこまでも公助を厚くして良い話ではありません。何でも国や自治体に支援を求められる、あるいは責任を負わせることでもありません。
公助による支援が必要なのは、被災者以外にも沢山います。生活困窮者、母子家庭、障がい者、高齢者、その他、新聞・ニュースにはそんな人たちの話が満載じゃないですか。
自助・共助と公助の線をどこに求めるのか。
今回の特例の報道に接し、いろいろ考えさせられている私でした。